カープ初優勝時の監督を務めた古葉竹識氏が11月12日に死去した。ここでは球界に偉大な功績を残した古葉氏を偲んで、過去「広島アスリートマガジン」で掲載された記事を振り返っていく。

カープ監督を11年間務めた古葉竹識氏。チームを4度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた。

 今回は2012年、カープが15年連続Bクラスに低迷していた当時の企画「カープOBの提言」でのインタビューをお送りする。

◆ファンと一体となってこそ「全員野球」

 カープの監督時代は、広島での開幕戦に行く直前に毎年応援団の方々が朝早くウチに来てくれて、「今年も頑張れよ!」と出陣式をしてくれましたね。現在の監督ではこういうことはあり得ないのではないでしょうか(笑)。

 ここまで広島で頑張ることができて、そして評価して頂けたというのは、そういう方たちが一生懸命、必死になって応援してくれて、スタンドから目を光らせて選手たちを見て頂いたからです。

 やはりファンの皆様と一体となってこそ、本当の意味での『全員野球』ですよ。一丸となって野球をしないことにはいい結果は出ませんから。そういうファンの方たちと繋がっていたことが優勝に繋がっていったと思っていますし、私が今でも大学野球の監督をさせていただいて現役でいられるというのは、そういう方々のおかげだと思っています。

 カープの監督時代、いつもオーナーと話をしていたのですが、「コーチに責任は一切ありません」と言っていました。自分がこんな練習を取り入れて選手をレベルアップしてほしいということをコーチにお願いをしている訳ですから。

 そしてその通りコーチのみんなは一生懸命に動いてくれていました。ですから私は「一切コーチ連中に辞めてもらうつもりはありません。負けて成績が残せなかったときは全て監督の責任です。ですから、もしものときには、どうぞ私をクビにしてください」ということをオーナーに常々言っていました。

 選手、コーチを使っているのは自分なんです。ですから常に一年一年覚悟を持つのが監督というものです。

 私が監督時代、自分なりにいつも思ってきたのは『自己満足ではどうしようもない』ということ。このチーム、この選手たちで相手の5チームと戦えるかということを考え、どのようにすれば勝つのかを考えてチームを作り上げていくかは、全て監督の責任なのです。

◆常に他チームとの比較でチーム作り

 カープ監督時代はシーズン中から常にスカウトの方とグラウンド上で定期的に話し合いを持っていました。そこでは「来年以降はこのポジションを補強する必要がある」など、常に2、3年先を見据えてチーム作りをしていました。

 そして次に、相手5チームとの比較が常に大事になってきます。投手がベンチに8人前後入ります。それを相手チームと比較したとき、『3人は勝っているけど、5人は劣っているな』という状況になれば、シーズンを通じてその3人での勝ち星しか計算が出来ない。

 相手の5チームよりも最低でも5人くらいは上回らないといけないのです。そうでなければチームを優勝に導くことが難しくなってきます。打線もそうです、一番から八番まで8人野手がいますよね。

 例えば、そのうち4人が相手チームと同レベルであった場合は五割程度しか勝てない訳です。

 ですから1人でも多く、他チームよりもレベルの高い選手を作り上げていくことが大事になってきます。常に相手との比較で、弱い部分をいかにして作り上げていくかを考えていました。これも全て監督の責任となるわけです。