サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。現在、11勝13分13敗でリーグ12位のサンフレッチェ広島。沢田謙太郎ヘッドコーチが監督として指揮を執ることになってから、いまだ勝ち星がない。苦しい戦いが続いているが、シーズン最終戦となる12月4日の徳島戦は、来季につながる試合をみせたい。今回のコラムでは、11月3日の鹿島戦の印象的なシーンを振り返る。

11月3日の鹿島戦で、2017年6月の鹿島戦以来となるJ出場を果たした塩谷司。

◆青山の技術が光るアシスト。逞しさが増した塩谷にも期待

 惨敗を喫した鹿島戦でしたが、いくつか目を見張るプレーもありました。一つ例を出すと青山敏弘。前半34分、左サイドを駆け上がりボールを持ったときの動きです。左サイドにいる場合、普通は左足のインサイドか右足のアウトサイドでボールを扱うのですが、青山は体を開いて右足のインサイドでラストパスを出しました。

 体の動きと向きを変え、ステップを踏みながら、エゼキエウのタイミングを見て放たれた、正確なコントロールを備えた丁寧で優しいパス。これは、絶対に得点につなげようという青山の気持ちが込められたアシストだったと思います。

 そして、森島からサントスへの良い形でのカウンターもありました。得点にはなりませんでしたが、勝つためには、連携力で突破するカウンターを積極的に増やしていくことが大事です。

 サンフレッチェには、サントス、浅野雄也、エゼキエウなど、スピードのある選手がそろっているので、個々の能力を生かすためにもカウンターを仕掛けていってほしいと思います。

 そしてうれしかったのは、塩谷司が4年ぶりにJのピッチに立ったこと。当たりの強さやロングフィードなどはさすがでしたし、どっしりとした下半身をはじめとした強靭な体が醸し出すオーラを懐かしく感じました。

 試合で当たり負けしない強さを見せてくれていますが、これからもっとコンディションは上がっていくと思います。残り試合は少ないですが、塩谷のプレーにも注目したいですね。

 サンフレッチェには得点力のあるDFが多く、タレントがそろっているだけに、今後ポジション争いが激しくなることが予想されます。また、塩谷がいることで、セットプレーのバリエーションが増えるでしょうし、彼自身の攻撃力も期待できます。そういう面では、今後、チーム全体の得点力も上がっていくのではないかと思います。