現役引退表明から約3カ月後、アメリカの自宅でPCを通して届けられたK.ジョンソンの言葉。それは6年間在籍したカープ、そして家族と共に暮らした広島への思いに溢れたものだった。引退の決断した理由、カープでの思い出、石原慶幸・西村公良への思い、そして今のカープへのメッセージ……。1時間を超える独占取材で、最強助っ人左腕が思いの限りを、引退後、初めて告白した。(全5回のうち5回目・取材は11月上旬)

今回の企画にあたり、K.ジョンソンから届いた家族写真。取材を通して感じたのは家族への感謝の想い。最強助っ人左腕は、カープのため、ファンのため、そして家族のために腕を振り続けた。

◆子ども達に広島の街を見せてあげたい

4回目から続く
─球団から発表された引退メッセージでは『広島は第二の故郷になった』と言われていました。広島の街にどんな魅力を感じておられたのでしょうか?

「都会の要素も自然の要素もあるところが広島の街の魅力だと思います。自転車や路面電車でいろんなところに行けますし、広島市内でいろんなことができます。春は川沿いで桜並木が楽しめますし、身近な場所に公園があるので子ども達との時間も楽しめます。あと、おりづるタワー(広島市中区)から見渡す眺望は最高でした。街も素晴らしいのですが、そこに暮らす人々も本当に温かったです。街で出会っても家族の時間を尊重してくれましたし、自分たち家族が困っていたら助けてくださる方も多かった。そういう広島のみなさんが大好きです」

─『おかえりなさい』と言える日を楽しみにしています。

「広島に帰りたいという思いは夫婦共に持っています。というのも、広島で育った長女が大きくなったとき、住んでいた場所や遊んでいた場所を見せてやり、当時の話をしてあげたいんです。また、広島をあまり知らない長男にも、お父さんとお母さん、お姉ちゃんは、この街で過ごしていたんだよと伝えてあげたい。なので必ずいつか広島には帰ってきます」

─広島で待っています。今回の取材は『J SPORTS』とのコラボ企画となっており、ジョンソン特集をやるとSNSで告知したところ、大きな反響がありました。それだけジョンソンさんの言葉を待っている方が多いということだと思います。最後に、カープファンのみなさんにメッセージをお願いします。

「ファンのみなさんに感謝してもしきれない6年間でした。良い結果を残したシーズンもあれば、悔しい結果に終わったシーズンもありました。また、結果を残せていない時は、街の中で握手やサインを求められた際、断ることもありました。それはファンの方のことが嫌いというわけではなく、自分の中で線を引くことで結果を残さないといけない気持ちを強く持つためでもありました。ただ、ファンのみなさんは、結果が出ていない時も、ずっと応援を続けてくださいました。ファンの方からネガティブな言葉をかけられた記憶はありません。そして、引退した今でもSNSを通して、ファンのみなさんがいろんなメッセージや写真を送ってくださいます。ファンの人たちのサポートがなければ、6年間、日本でプレーすることはできなかったと断言できます。野球においても、家族との生活においても、たくさんの貴重な体験をさせてくれた広島のみなさん、カープファンのみなさんには、心から『ありがとうございます』と伝えたいです」

取材協力/J SPORTS

◆Kris Johnson(クリス・ジョンソン)
1984年10月14日生・アメリカ出身。37歳。ウィチタ州大-パイレーツ-ツインズ-広島。2015年シーズンにカープに入団。来日初登板で1安打無死球の準完全試合を達成。以降も先発ローテの柱として登板を重ね、この年14勝。防御率1.85で最優秀防御率のタイトルを獲得した。2年目の2016年は開幕投手を務め、自己最多の15勝。外国人では2人目となる沢村賞を獲得。シーズン後には3年契約を結んだ。2017年は6勝に終わるも、2018年からは2年連続で2桁勝利を記録。2020年は0勝に終わったが、6年間で球団の外国人投手では最多となる通算57勝をあげ、左腕エースとして活躍した。2020年シーズンオフにカープを退団。2021年8月18日に球団を通して現役引退が発表された。