2020年までカープに在籍し、2021年に現役引退を発表した外国人投手のクリス・ジョンソン。

ジョンソンとの名バッテリーで数々の勝利に貢献した石原慶幸氏。

 2015年に来日すると14勝を記録し、先発ローテに欠かせない存在になると、2016年からは先発の柱としてリーグ3連覇に大きく貢献した。

 ジョンソンが日本で登板した128試合中、118試合でバッテリーを組んだのが、2020年限りで現役を引退した石原慶幸氏。ジョンソンが日本で挙げた57勝は全て石原氏とのコンビだった。ジョンソンが日本で活躍する上で欠かさせない存在だった石原氏に、改めて思い出を聞いた。

◆衝撃の来日初登板から始まった名バッテリーの歴史

 ジョンソンと初めて出会ったのは、彼が来日初のキャンプ前にマツダスタジアムのロッカールームでした。

 通訳の西村(公良)さんから紹介してもらったのですが、最初は物静かな人かな、という印象でしたね。

 彼の球を受けたのはその後のキャンプでしたが、どの外国人投手も大体その時期は準備段階なんです。なので、球数も日本人投手ほど投げ込まないので、そこで彼の本当の実力というのは、まだ把握することはできませんでした。ですが、とてもバランス良く、クセのないフォームだと感じていました。

 オープン戦あたりから、だんだんとギアが上がってきていましたが、「これはすごい」と思ったのが、彼の来日初登板(2015年3月28日・ヤクルト戦)でした。

 試合前のブルペン時点から球の強さが、それまでとは全く違っていました。結果的にその試合で彼は1安打完封をやって退けました。まさか、こんな球を投げるなんて思っていなかったですし、アドレナリンも出ていたんでしょう。僕にとって、忘れられない試合の1つでもあります。

 来日当初、ジョンソンは決して球種が多い投手ではありませんでした。基本的にフォーシームとカーブ、小さく曲がるカットボール、この3つが主体でした。

 ですが、フォーシームを両サイドにきっちりと投げ分けられる制球力、そしてカーブでもカウントが取れ、カットボールは右打者を差し込むことができていました。制球力が高いだけにリードのやり甲斐がありましたし、捕手のリードがより重要になるプレッシャーもありましたよね。

 また、彼はすごく研究熱心な投手でした。来日2年目には「左打者に対して大きなスライダー系がないからもう少し左をアグレッシブに攻めたい」ということで、ツーシームを習得しました。

 左打者のインコースを突くために覚えた変化球でしたが、結果的に右打者にも効果があり、彼の投球の幅が広がりました。その後、彼は大きく曲がるスライダー、チェンジアップと毎年変化球の種類を増やしていました。ジョンソンは毎年1シーズンを通じて、自分の投球を振り返った上で、自分でプランを立てながらオフを過ごしていたんでしょうね。

 ジョンソンは日本で128試合に先発しましたが、僕はほとんどの試合でバッテリーを組ませてもらいました。基本的に投球の組み立てはすべて僕が考えていましたが、それだけ信頼してくれていたと思います。

 6年間バッテリーを組み続けてきた中で、数えきれないくらいの思い出があります。忘れられない試合を挙げるなら3つあります。1つは先ほどお話した2015年の来日初登板初勝利試合。あの衝撃は個人的にすごかったなと。

 もう1つは、2018年の日本シリーズ第2戦目(対ソフトバンク)です。あの時は、前日(大瀬良)大地とアツ(會澤翼)のバッテリーだったんですが、それをずっと見ていて『ジョンソンとなら、どのようにリードしようか』と考えていました。その中で、あのソフトバンク打線を相手に7回1失点に抑えることができて、勝つことができて、本当に印象深い試合です。

 そして3つ目が、最後のバッテリーになった横浜スタジアムでのDeNA戦です。僕は現役最終年で、あのシーズンはジョンソンとあまりバッテリーを組んでいませんでした。当時彼は勝てなくて、とても苦しいシーズンを送っていました。

 僕としては「少しきっかけさえあれば絶対に立ち直ることができる」と思っていたので……。なんとか力になって勝たせてあげたい一心でしたが、それができなかったという、申し訳ない気持ちがあります。(後編に続く)