12月15日、「NPB AWARDS 2021」が行われ、セ・リーグの最優秀新人賞(新人王)に栗林良吏が選ばれた。

 栗林はプロ1年目の今季、クローザーに抜擢されると開幕から大車輪の活躍。球団新記録となる開幕から22試合連続無失点、新人最多記録に並ぶ37セーブなど、数々の記録を樹立すると、東京五輪では侍ジャパンのクローザーにも抜擢され、悲願の金メダル獲得に大きく貢献した。今シーズン、救援に失敗したのはわずか1度。驚異のリリーフ成功率を誇るなど、わずか1年足らずで日本を代表する投手へと成長した。

 広島アスリートマガジンでは、ドラフト会議終了後から、4度にわたり、栗林を取材。ここでは、「編集部セレクション」として、カープの守護神に成長した栗林が、プロ1年目に話した言葉を振り返る。

 今回は東京五輪後の9月に行なった4度目の独占インタビュー(前編はこちら)。クローザーとして数々の記録を打ち立てる右腕の熱き想いに迫った。(『広島アスリートマガジン』2021年10月号で行なったインタビューをもとにWEB用に編集)

2021年のセ・リーグ最優秀新人賞(新人王)に輝いた栗林良吏

◆ピンチで球場を見渡すと自然と気持ちが引き締まる

─開幕からクローザーとしてフル回転してきたうえに、夏場はオールスター戦、東京五輪と休みなく投げ続けてこられました。おそらく目に見えない疲れが蓄積され、投球に影響を与えているケースもあるのではないかと思います。思うような球を投げられなかったとき、マウンドでどんな風に頭を切り替えていますか?

「ピンチを迎えた時は、マウンドから周りを見渡すようにしています。カープのベンチを見ると、僕にバトンをつないでくれた投手の存在に気がつきますし、スタンドを見るとカープファンのみなさんが声援を送ってくださっています。それを見て、『自分が打たれたらチームが負けてしまうからしっかりやらないといけない』という気持ちになっています。気持ちを切り替えるというより、気持ちを引き締めていると言ったほうが正しいかもしれません。そういう意味では、自分だけの力で頭を切り替えることができているのではなく、チームメートやカープファンのみなさんなど、周りの雰囲気によって、自然と気持ちが良い方向に変わっているのかなと思います」

─マツダスタジアムでは26試合(10月22日時点)に投げていまだ無失点を継続中。ホームグラウンドだけに特別な思いがありますか?※2021年、マツダスタジアムでは27試合に投げて無失点。

「そうですね。ホームでは相手に得点を奪われたくないですし、なによりも負けたくないと思ってマウンドに上がっています。また、カープファンの方の存在も大きいです。ファンの方が支えてくださっているので、僕も自信を持って球を投げることができています。これからもマツダスタジアムでは点を取られたくありませんし、その思いを忘れずに投げていきたいと思っています」

─これまでインタビューをさせてもらうたびに感じたことなのですが、栗林投手がメディアに向けて発信される言葉には未来を動かす力強さ、周囲への感謝の思いが溢れているように感じます。メディアへの発信で何か意識されていることはありますか?

「社会人の頃は、そこまで高い意識で取材に臨んでいなかったのですが、プロ野球選手になり、取材も自分の仕事の一部だと思うようになってから意識が変わりました。新聞やテレビ、雑誌など、どのメディアにもその向こう側にファンの方がいて、選手の情報や発する言葉を楽しみに待たれているのではないかと思います。なので、発信する以上は、見ていただく方、読んでいただく方に喜んでもらいたいですし、自分のメッセージを届けていくのも、プロ野球選手の役目の一つだと思っています」

─初めてのシーズンも残りわずかです。ここまでクローザーとして数々の記録を打ち立て、新人王の期待もかかっています。最後に栗林投手の登板を楽しみにしているカープファンのみなさんにメッセージをお願いします。

「今年の目標は『1年間クローザーとして投げ抜く』ことだったので、その目標を達成するためにも、自分の登板がある限りは、スコアボードにゼロを刻み、チームが勝ったまま試合を終わらせられるように投げていきたいと思っています。そのためには、カープファンのみなさんの存在が絶対に必要です。今は声での応援は難しいですが、スタンドから聞こえてくる拍手が、マウンドで投げる際の大きな力になっています。ピンチの場面はもちろん、どんな場面でも大きな拍手を送っていただけると、自然とプラスアルファの力が湧いてきます。とにかく残り試合も、一つでも多くチームの勝利に貢献できるように頑張りますので、最後まで熱い声援をよろしくお願いします」