2021年、4位に終わったカープは、2022年に向けてドラフト会議では育成を含めて6投手を補強した。一方で6人の投手、3人の野手が戦力外となった。ここでは、2021年限りで戦力外となった選手たちを振り返っていく。今回は投手編をお送りする。

2021年限りで戦力外となり、引退を発表した今村猛

◆「球団歴代最多ホールドを記録。3連覇を支えた鉄腕リリーバー」
今村猛/清峰高-広島(2009年ドラフト1位)

通算成績
(一軍)431試合  21勝30敗  36S  501.2回  四死球195  三振468  自責193  防御率3.46 (二軍)160試合  22勝14敗 13S  251回  四死球108  三振218  自責107  防御率3.84

 1999年の河内貴哉以来となる高卒ドラ1投手として入団。プロ2年目に中継ぎに転向し54試合に登板して一軍定着。2012年には球団新記録となる29試合連続無失点をマークするなど、69試合に登板し防御率1.89と安定した投球を披露。オフには侍ジャパン入りを果たし、第3回WBC日本代表でも登板。球界を代表するリリーフへと成長した。

 その後から2年間不調に陥り、登板機会を減らしたが、2016年に復活。勝利の方程式の一角として67試合に登板し、25年ぶりの優勝に大きく貢献。日本シリーズでは全6戦に登板し、4ホールドを記録した。

 翌2017年には中崎翔太が故障離脱した時期にストッパーを務めて23セーブ。2018年はやや調子を崩したものの、リーグ3連覇中の3シーズンで178試合に登板し、鉄腕ぶりを発揮した。

 2019年からは一軍での登板数が激減し、昨年はわずか6試合。今季は二軍でチーム2位の36試合に登板するなど、最後まで一軍での登板機会を目指していたが、一軍登板はなかった。リーグ3連覇を支えた鉄腕が、静かにチームを去る。

◆「期待され続けた150キロ左腕。一軍ブルペンでの競走に勝てず」
中村恭平/立正大淞南高-富士大-広島(2010年ドラフト2位)

通算成績
(一軍)97試合 2勝11敗 185回 四死球115 三振134 自責87 防御率4.23 (二軍)163試合 24勝42敗 3S 251回 四死球248 三振349 自責274 防御率4.30

 2011年ドラフト2位で富士大から入団。かつて左のエースとして活躍した高橋建が背負っていた背番号22を与えられ大きく期待された。1年目から一軍登板を果たしたものの結果を残せない年が続き、初勝利はプロ3年目の2013年だった。だが「何が正解か分からない状況で投げていた」と、伸び悩むシーズンが続いた。

 転機は2019年。「単純に筋力が上がれば球速が上がると思って取り組んだ」。上半身のウエートを重点的に鍛えたことで球速が一気に向上。最速156キロを計測するなど、中継ぎとして自己最多の43試合に登板。

 左の中継ぎ定着を期待されたが、故障もあり14試合登板に留まり、今季は二軍でも16試合の登板だった。ポテンシャルの高さから毎年のように期待された左腕も、32歳での戦力外となった。

◆「期待の長身右腕、プロ2年目でまさかの戦力外」
鈴木寛人/霞ヶ浦高-広島(2019年ドラフト3位)

通算成績
(二軍)1試合 0勝0敗 1回 四死球1 自責1 防御率9.00

 高校時代にはエースとして夏の甲子園にも出場。長身から投じられる速球はプロのスカウトから注目を浴びていた。186センチの長身、150キロ前後の速球と、ポテンシャルの高さは誰もが認めるところだった。

 1年目は主に体力強化に励んだ。育成の意味合いが強いとは言え、わずか1試合登板に終わった。飛躍を誓った今シーズンは二軍での登板もなし。2年間で残った数字は、1イニングを投げて2安打1失点1四球、防御率9.00。二十歳の長身右腕は自身の特徴を全く発揮できず、カープのユニホームを脱ぐことになった。

◆「父を追いプロ入りも実力を発揮できず」
畝 章真/広島新庄高-名古屋商科大-四国・香川-広島(2019年育成ドラフト3位)

通算成績
(二軍)34試合 0勝1敗 35.2回 四死球27 自責25 防御率6.31

 畝龍実コーチの長男ということもあり、入団時に話題となった畝章真。奮闘を見せてきたが支配下登録は叶わず、プロ2年目で戦力外となった。

 広島新庄高では故障の影響もあり公式戦出場はなし。大学時代に投手転向。四国IL香川を経て、2019年育成ドラフト3巡目でカープに入団。昨季プロ1年目は二軍で20試合に登板も、防御率8.71。勝負の2年目となった今季は14試合に登板し、15回を投げ5失点、防御率3.00だった。必死に支配下登録を目指したが、プロ野球の高い壁の前にインパクトあるアピールならず。

◆「ナックルボールが武器の長身右腕、結果を残せず」
佐々木 健/小笠高-広島(2017年育成ドラフト3位)

通算成績
(二軍)8試合 0勝0敗 7.1回 四死球13 自責10 防御率12.27

 高校時代は甲子園出場はなく無名の存在。189センチの長身右腕として2017年育成ドラフト3位で入団した。1年目は二軍公式戦での登板は1試合のみ。2年目は故障などもあり公式戦登板はなし。

 勝負と位置付けた昨季、ナックルボールの習得に挑戦した。シーズン後に育成選手として再契約した。心機一転迎えた今季、二軍公式戦では自己最多となる4試合に登板も、4イニングを投げて4安打、2奪三振、3失点、防御率6.75とアピールならず。必死に支配下登録を目指し続けてきたが、高い潜在能力を発揮できなかった。

◆「二十歳の速球派右腕、育成からの再出発へ」
行木 俊/横芝敬愛高-四国・徳島-広島(2020年ドラフト5位)

通算成績
(二軍)1試合 0勝0敗 1回 四死球0 自責0 防御率0.00

 「来季契約を結ばない」と発表された6選手の中にルーキー行木の名があったが、「育成選手として契約の方針」と球団は発表。

 独立リーグで急成長を見せてプロ入りを果たした行木。4月に二軍初登板を果たすも、その後は故障の影響で登板なし。素材型投手としての指名の見方も強かっただけに、今後の伸び代も期待できる。独立リーグ1年目も故障に泣いたが、2年目で大きく飛躍を見せた行木。「そのときの経験がいま活きています」。プロ1年目から味わったこの悔しさを糧に、来シーズンの逆襲が期待される。