昨シーズン、佐々岡監督2年目となるカープは終盤に追い上げを見せたものの、3年連続Bクラスとなる4位に終わった。攻撃陣を振り返ると小園海斗、林晃汰、宇草孔基など若手野手が出場機会を得た。

メジャー移籍を目指す鈴木誠也選手。

 そんな中、4番としてチームを牽引した鈴木誠也は、打率.317で二度目の首位打者に輝き、自己最多となる38本塁打を放つなど抜群の存在感を放った。そしてオフにはポスティングシステムを利用してメジャー移籍を表明。その移籍先が注目されている。

 ここではヤクルト、カープで活躍したプロ野球解説者の笘篠賢治氏に、メジャー移籍を目指す鈴木誠也について語ってもらった。

◆メジャーに挑戦するなら今が一番良い時期

 カープのみならず、プロ野球界としてもオフの大きな話題となったのが、鈴木誠也のメジャー挑戦するというニュースです。まず、日本を代表する選手が数々の国際舞台を経験すれば、世界を意識する気持ちが生まれてくるというのは、アスリートであれば鈴木に限らず、その他の選手も同じだと思いますし、その気持ちは素晴らしいことです。

 彼は現在27歳ですが、メジャーに挑戦するなら今が一番良い時期だと思います。鈴木のように外野手で長打力があって、走って守れる選手となると、私の現役時代で言うと西武などで活躍した秋山幸二さんが思い出されます。

 「日本人の野手の中でメジャーに一番近い」と言われていたのですが、当時はそういう制度はなく、挑戦という考え、風潮もない時代でした。しかし近年では日本人の選手が、球団の判断によりメジャー挑戦を容認するというポスティングシステムが導入され、今の若い選手にとって、良い時代になったのではないかと思います。

 2021年の鈴木の打撃を振り返ってみると、キャンプ時にはアッパー気味に打球を上げていくような試みをしていました。このトライに関しては少しハマらなかった部分がありましたが、シーズン中に微調整を重ねることで、後半戦はホームランを量産していきました。このあたりもメジャー挑戦を意識して変えようとしていたのかもしれませんね。

 また守備面で言えば、彼の肩は向こうでもトップクラスだと思います。もちろんメジャーにはとんでもない選手もたくさんいますが、その中でも鈴木の送球にはコントロールがありますよね。それを考えると、外野手というポジションはイチローではないですが、レーザービームを期待して見ていたいですね。

 鈴木は1994年生まれで、今年メジャーで大活躍した大谷翔平(エンゼルス)と同学年です。これもファンからすると対戦を見たいところです。そして鈴木の中にも「あいつがやれるなら、俺だって」という気持ちはどこかにあるはずです。右打者と左打者、そして大谷は投手も務める二刀流という部分で違いがあるにせよ、仮に鈴木のメジャー行きが決まれば、自然と注目される対戦になるでしょうね。

 近年はカープの4番としてのみならず、日本代表の4番としても活躍してきただけに、メジャーが決まればマークも厳しくなることが予想されます。

 いろいろと苦労する面も出てくるかと思いますが、私としては打席に立った感覚を大事にしてほしいです。彼は常に形を変えながら日本では結果を出してきただけに、メジャーでも打席での感覚という面で早くアジャストできるかどうかが勝負になってくると思っています。いずれにせよ、メジャー移籍が決まってほしいですし、アメリカでプレーする姿が楽しみです。