思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回スポットを当てたのは、『新人選手が入寮時に持ってきた物』。その奥深さ!?をオギリマ視点でゆる~く取り上げる!

◆野球用具、愛読書、よくわからないもの…。選手の『持ち物』は千差万別

 新しい年が始まった。

 この時期、東京在住の私は「広島では、年末年始にカープ選手の特番がたくさん放送されるんだろうな……」と羨ましい気持ちで一杯になるのだが、そんな中で、年明けの楽しみとしている情報がある。それが『新人選手の入寮』だ。

 例年、松の内が明けた頃に、廿日市市の大野寮に新人選手が入寮する。初々しい表情の選手たちが荷物を手に寮にやってくる様子や、今後の抱負を語るシーンなどは全国にも報道されるのだが、何より私が楽しみにしているのが『入寮時に持ってきた物紹介』だ。

 寮の部屋は限られたスペースのため、多くの物を持ち込むことはできない。つまり入寮にあたり選手が持って来た物は、当人にとって大切なものであり、その物から価値観や性格をうかがい知ることができる。報道陣もその点を心得ているとみえて、その選手の思い入れの深そうな物や珍しい物を、積極的に紹介してくれている。

 かくして私は『入寮時持参物ウォッチャー』となった訳だが、毎年の新人選手の持参物をチェックしていると、いくつかのジャンルに分類できることに気が付いた。ここから、ジャンル別に入寮時持参物を見ていきたいと思う。

○野球用具

 これから野球を生業とする新人選手たちにとって、商売道具でもあるグラブやバットなどを持ち込むのは当たり前のことなのだが、そこにこだわりや信念が垣間見られることもある。たとえば2012年に入寮した菊池涼介は、内野用と外野用の二種類のグラブを持ち込み、どのポジションでも守るという意気込みを見せていた(※注1)。菊池に関しては、入寮時に荷物を着払いで送ったというエピソードも知られているが、それはここでは置いておく。

◎本

 愛読書や目標とする人の著書などを持ち込む選手も多い。他球団では、2019年に中日・昇竜館に入寮した根尾昂が、これからは野球が仕事になるからと『野球協約』と『野球規則』のみを持参した話が有名である(※注2)。カープでも、黒田博樹やテニス選手ジョコビッチの本を持参した岡田明丈(2016年入寮)、確定申告の入門書を持ち込んだ加藤(現・矢崎)拓也(2017年入寮)など、本を紹介する選手が多数いる。中でも印象的だったのが野間峻祥(2015年入寮)で、大島優子の写真集を寮に持参したことが報じられた(※注3)。

◎思い出のグッズ

 高校時代の監督やチームメイト、家族など、大切な人たちとの思い出の品を持参するという選手もいる。高校時代のチームメイトとの集合写真があしらわれた時計を持って入寮した韮澤雄也(2020年入寮)や、高校時代の監督が描いた鯉の絵を持参した二俣翔一(2021年入寮)などがこのケースにあてはまる。

◎故郷のアピール

 自ら持って来たのか、或いは地元の後援会に持たされたのか、出身地を象徴するグッズを持ち込むという場合もある。熊本県のご当地キャラ・くまモンを持ち込んだ山口翔(2018年入寮)や、出身の宝塚市にゆかりの漫画家・手塚治虫のキャラである鉄腕アトムのぬいぐるみを持ち込んだ小園海斗(2019年入寮)などがこれにあたる。佐々岡監督からして、本人の入寮時(1990年)に、故郷・島根県浜田市の伝統芸能である石見神楽の面を持ち込んでいたことから、『故郷アピール』はカープの伝統なのかも知れない。

◎よくわからないもの

 「なぜそれを持ち込んだのか?」と首をかしげたくなるものを持参する選手もたまにいる。ここ数年で一番インパクトが強かったのが、2015年に入寮した塹江敦哉である。寮に向かう途中で入手したという大きなサボテンの鉢植えと、何の生き物だかよくわからないピンクのぬいぐるみを持参した塹江(※注4)。なんだかよくわからないが故に、とても気になる存在であった。

 この原稿が発表される頃には、新入団の選手たちの入寮が行われていると思う。塹江のサボテンを超える物を持って来た選手がいるのかどうか、今から楽しみである。

※注1:「広島アスリートマガジンWEB」2021年1月10日

https://www.hiroshima-athlete.com/articles/-/1068

※注2:「スポニチ」2019年1月7日

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/01/07/kiji/20190106s00001173364000c.html

※注3:「東スポ」2015年1月10日

https://www.tokyo-sports.co.jp/baseball/354861/

※注4:「デイリー」2015年1月10日

https://www.daily.co.jp/baseball/carp/2015/01/10/0007645995.shtml

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。