ここ数年、若手投手の台頭が目立ち世代交代の兆しを感じるカープ投手陣だが、チームが浮上するためには、大瀬良大地や九里亜蓮といった30代先発投手の存在は欠かせない。カープOBの大野豊氏に、経験豊富な投手が、チームにもたらす影響について聞いた。

昨季は故障もあったが二桁勝利を記録した大瀬良。今季は選手会長としてチームをまとめる役割を担う。(写真は2022年春季キャンプ)

◆投手陣を引き締める91年世代の2投手

 今季からカープの選手会長に就任した大瀬良ですが、彼はもともと責任感が非常に強い選手であり、自分だけではなくチーム全体を考えられるタイプです。リーダーとしての役割を全うしながらも、やはり彼には最多勝争いをするような数字が求められます。

 彼の投球を見ていると、ややカットボールやスライダー系に頼った内容が増えている印象があり、打者に対しての入り、そして勝負球もカットボール系というイメージがあります。もちろん、攻めの投球の一環であると思います。

 その一方でストレートは見せ球になっている印象を受けます。大瀬良はもともと力強いストレートが持ち味です。私としてはストレートをしっかり投げ込んだ上で、カットボールを活かすような投球を目指して欲しいと思っています。

 そして大瀬良と同期入団の良きライバルである九里ですが、昨季は自身初の二桁勝利(13勝)を挙げて最多勝を獲得しました。九里の良さというのは『気持ちの強さ』であり、気迫が球に伝わっています。これは若い頃から変わらない彼の強みだと思います。

 キャンプのブルペンでも、昨年は340球以上を投げ込んでいました。それがすべてとは言いませんが、この意気込みというものが、2021年の最多勝につながった部分もあると思います。

 入団から数年かかりましたが、初めての二桁勝利が最多勝なわけですから、これまで積み重ねて頑張ったご褒美のように感じました。そして連続して数字を残すことが実績を積み重ねる上では難しく、彼にとってもチームにとっても大事になります。タイトルを獲得したことで、良い意味で考えることもあるでしょうし、昨季を超える進化を見せてもらいたいですね。

 30代の先発陣に触れてきましたが、私は現役時代43歳まで投げさせていただきました。常に「若い選手には負けない」という気持ちでいましたし「年齢で野球をやるわけではないんだ」と。「必要とされる選手になれれば、何歳になっても野球はやれるんだ」という気持ちでやっていました。

 若い頃はとにかく結果が欲しいですから、結果ばかりを追い求めてしまって、自分の良いところを潰してしまって逆に結果が出なかった……ということもあります。

 30代の彼らの場合は先発として実績も経験も積んでいますから、あまり結果にばかり走り過ぎずに、自分たちのやってきたこと、やるべきことをまずは出すんだという気持ちで取り組んで欲しいです。その中で、シーズンが終わってみると内容が良かった、という良い結果にもつながってくるのではないかと思います。結果よりもまずは自分を出す、自分を活かすという考えで取り組むことも必要かもしれません。

 いずれにせよ、経験と実績を持っている彼らが先発陣をしっかりと引っ張っていけるような、そんな存在になって欲しいという期待をこめて、今シーズンの彼らに注目していきたいと思います。