現役最終年となった2016年、単独インタビューを受ける黒田博樹

 平成のカープは佐々岡真司、黒田博樹、前田健太と球界を代表するエースがチームを支えてきた。1991年の優勝以来、カープは長きにわたり低迷が続いたが、その低迷期を戦い抜く中でカープのエースへと上り詰めたのが、黒田博樹だ。

 広島アスリートマガジンではこれまで合計18回の黒田の独占インタビューを重ねている。今回は黒田がその当時本誌に語った言葉と共に、不動のエースへと上り詰めた2007年までを振り返っていく。

 本誌が初めて黒田を独占取材したのは1999年、プロ3年目のシーズン前だった。自身は前年故障もありわずか1勝。チームは長年投手陣を支えてきた大野豊が引退するなど、世代交代が急速に進んでいた時期。黒田はそんなチーム状況の中で先発ローテ定着を目指す若手投手の一人だった。

「今は全くと言っていいほど自信はないです。昨年ああいうことがあったんで、不安の方が大きいです。今はただ毎日毎日を一生懸命してる、という感じです」

 この年、黒田は苦しみながらも先発ローテの一角として5勝を挙げると、翌2000年にはリーグ最多の7完投を記録するなど徐々に自信を深めていく。『ミスター完投』と呼ばれ始めたのもこの頃だ。

「一人で投げ切るということにすごく充実感もあります。やっぱり試合が始まってマウンドに立ったら、最後まで降りたくないというのはあるんで。先発ならみんなそう思うと思うんで。だから一人で投げ抜いて勝てるというのは、本当に最高ですね」

 2001年、12勝を挙げて自身初の二桁勝利、リーグトップの13完投を記録。完投は黒田の代名詞となった。翌2002年も二桁勝利を達成すると、2003年には3年連続開幕投手を務めていた当時のエース・佐々岡真司(現カープ監督)に代わり、初の開幕投手に指名された。

「あの日はやっぱりそれだけ苦しかったというのもありますし、開幕っていう重圧も、どこかしらあったと思います。その中で勝てたという喜びというか、完投で勝てたっていう充実感は、なかなか味わうことができないんで、やっぱり普通に勝ったのとはちょっと違う気持ちになりました」

 山本浩二監督の下で初の開幕投手を務めた2003年シーズンを機に、黒田はカープのエースとして周囲に認められていった。