昨季は小園、林のプロ3年目コンビをはじめ、若手野手が躍動した一方で、30歳前後の選手は期待外れに終わった印象が強かった。ここでは、OBの笘篠賢治氏がカープ本来の野球を展開するうえで、奮起が期待されるプロ9年目の田中広輔について話してもらった。
※取材は2022年1月上旬。

復活が待たれる田中広輔。

◆経験を考えるとチームに欠かせない選手

 昨季カープ野手陣を振り返ると若手の台頭が目立ったシーズンでした。その一方で中堅、ベテラン選手の役割や奮起も気になるポイントです。

 ここで取り上げたいのは、昨年まで選手会長を務めていた田中広輔です。チームリーダーとしてチームを牽引する役割を非常に頑張っていた一方で、打撃成績は過去最低に近い数字となってしまいました。

 脚の怪我から復活して状態も上向きでしたし、試合で使ってみたら面白いと思っていた時期もありました。その時期を、首脳陣が逃してしまったのではないか? というのが個人的な印象です。特に体の状態が良いときにもっと起用して欲しかったと感じます。

 試合に出続けていた選手だけに、ベンチを温める期間が長引くと調子を掴みづらくなってしまうのだと思います。起用の最終決定をするのは監督ですが、「今の田中の状態はどうなのか」というあたりをコーチがより見極める必要があるかもしれません。

 またこれまで不動であったショートは小園海斗がほぼレギュラーといって良い状況となりました。もしも首脳陣が「小園に万が一があったときのために」と田中を一軍に帯同させていたとすれば、田中の配置転換も視野に入れて、三塁の他に一塁を守れるようにしても面白いのではないかと思います。

 もちろん本人がノーと言ったら話は別ですが、その方が彼のモチベーションを維持する上でも良いでしょうし、首脳陣も田中を起用する機会が増えると思います。新しいチャレンジとなれば、田中自身もまた違った視点で野球を見ることができるのではないかと思います。

 田中広輔という選手の野球に対する取り組み方が、チーム、若手選手たちに良い刺激や影響を与えていることは確かです。そのような選手をずっとベンチに置いておくというのは、もったいないという気がして仕方がありません。そういった意味でも、田中に関しては首脳陣による起用法も非常に大事になってくると思います。彼の経験を考えると、チームにとっては欠かせない選手ですからね。