カープを象徴する選手と言っても過言ではない。人に優しく、自分に厳しい。謙虚で向上心を失わない。そんな大瀬良大地がカープの新選手会長に就任した。〝強いカープを取り戻すために必要なことは何か〟カープのエースが力強い言葉で語り始めた。(全4回のうち3回目・取材は2021年12月下旬)

1回目はこちら ◎2回目はこちら

エースとしてカープを牽引する大瀬良大地。

◆次期エースに伝えていた思い。苦しい時にどう行動できるか

─大瀬良投手はリーグ3連覇を果たしたチームも、Bクラスに終わったチームも経験されています。このあたりのチームの変化はどう感じていますか?

「佐々岡監督に代わった2020年から若い選手が一軍で経験を積む試合が増えました。ただ、3連覇した頃のチームに若手の出場機会がなかったかと言えばそうではなく、一軍選手の年齢層も若かったはずです。違いをあげると、捕手、二遊間、センターのセンターラインが固まっていたこと。そして精神的支柱として黒田さんと新井(貴浩)さんがいたことです。そういう面も含めてチームのバランスが非常に良かったんだと思います」

─たしかに主力選手と若い選手がうまく融合していたように感じます。

「ここ数年、今の若い選手もいろいろな経験ができたと思いますし、昨季の終盤はCSを争う〝痺れる試合〟も経験できました。CSに届かなかった悔しい経験は今季以降につながっていくと思います」

─大瀬良投手も若い頃の〝痺れる試合〟の悔しい結果を糧に成長してきました。

「そうですね。だから、その経験がリセットされないように、若い選手たちがより意識を高く持ってオフの時間や春季キャンプを過ごしていけば、チームの力は上がっていくでしょうし、強いカープが戻ってくるような気がしています。そのためにも、僕たち中堅の選手が中心となって、若い選手がノビノビと野球ができる雰囲気をつくっていきたいですね」

─オフは、森下暢仁投手や大道温貴投手といった若い投手と一緒に自主トレを行われますが、練習を通して、どんなことを伝えていきたいですか?

「伝えたいという気持ちとは少し違うかもしれませんね。今回は僕から声をかけたわけではなく、彼らの方から『一緒にやらせてください』と言ってきました。何か学べるものがあると思ったから声をかけてくれたと思うので、自主トレを通して、僕の野球への取り組み方や考え方を感じてもらい、何か一つでもつかんでもらえたらいいなと思いますね。もちろん聞かれたことは何でも答えるつもりですが、期間も短いですし、自主トレだけで大きく成長するというのは難しいので、一つでもプラスになるものを持って帰ってもらいたいというスタンスで取り組むつもりです。それは巡り巡って、きっとチームのためにもなるはずですから」

大瀬良大地と森下暢仁(右)

─森下投手ですが、昨年は約3カ月近く、勝ち星がつかない時期がありました。同じ先発として、その頃の森下投手の姿をどう見ておられましたか?

「新人王を獲得した1年目のオフの時から、『いつか勝てない時期がくるから、その時にどんな取り組みをするかが大事だ』という話はしていました。そういう時に、〝普段の行動や立ち居振る舞いをキチッとできるか〟〝自分がしんどい時にこそ、勝てない原因のベクトルを自分に向けて踏ん張ることが大切〟だと伝えてきました。森下の性格を考えると、苦しい時でもしっかり頑張れる投手というのは想像がついていたので、そこまで深くは言わなかったのですが、今後のためにも精神的な部分は話してきたつもりです。技術的な部分は正直、言うことはありませんから。白星がつかない時期は苦しかったと思いますが、先発である以上、いつか通る道だと思いますし、昨季の経験を糧にさらに成長してほしいですね」(続く)

◆大瀬良大地(おおせら だいち)
1991年6月17日(30歳)/187cm・90kg/右投右打・投手/長崎県出身/長崎日大高-九州共立大-広島(2013年ドラフト1位)