球団歴代最多ホールドを記録し、3連覇を支えた鉄腕リリーバーが、昨年12月に現役を引退した。30歳の若さでの引退を惜しむ声も多かったが、鉄腕の体は限界を迎えていた。今回の独占ロングインタビューでは、カープでの12年間、引退を決めた本当の理由、そしてこれからの人生について赤裸々に語ってもらった。今村猛から贈られたメッセージを届ける。(全5回のうち2回目・取材は1月中旬)

1回目はこちら

マウンドでは常にポーカーフェイスで淡々と投げることを心がけてきた今村猛。経験を重ねるごとに、強い投球に安定感がそなわり、ブルペンに欠かせない存在に成長した。

◆大野さんに何度も指摘された投げる姿

─今村さんはプロ2年目の2011年に先発からリリーフに転向されました。高校まではエースとして投げてこられましたが、リリーフ転向に抵抗はなかったのでしょうか?

「先発への未練は全くありませんでした。高校まで先発で投げていましたが、先発だとチームの勝敗に関わる試合は限られてきます。なので高校の頃からもっと試合に関わりたいという思いがありました。プロに入って先発として結果を残せず、中継ぎとして投げることになりましたが、そういう思いもあって特に抵抗はなかったです。むしろ、毎試合投げるチャンスがあるという意味で、リリーフも楽しいと感じるようになりました」

2016年〜2017年はジャクソン、中﨑翔太(左)と共に『勝利の方程式』を形成。2017年には中﨑に代わり、一時期クローザーを務め、23セーブをあげた。

─プロに入って、数多くの指導者の下でプレーしてこられましたが、どの方との出会いが大きかったですか?

「たくさんいますが、プロに入って一番最初の投手コーチだった大野(豊)さんの存在は大きかったです。大野さんから受けたアドバイスで今でも覚えているのは『躍動感を持って投げなさい』。入団当初は投げる姿に元気がないと何度も指摘されていました。体全体を使って大きく投げようと心がけるようになったのは大野さんの指摘のおかげですね」

リリーフとして積み上げてきた115ホールドは球団歴代最多の数字。リーグ3連覇を果たした3年間では、178試合に登板するなど、鉄腕ぶりを発揮した。

─カープでのプロ生活で大切にしてきた思いはありますか?
「うーん……(熟考)。良いか悪いかは別にして、自分のペースでやることを大事にしてきました。皆さん、ご存知かどうか分かりませんが、僕はすごくマイペースなんです(苦笑)。〝自分を変えたくない〟という気持ちはありましたね」(続く)

若い頃からチームを俯瞰して「空いているポジションや求められるポジションで投げられればいい」と話していた今村。常にチームの勝利を第一に考え、その右腕を振るってきた。

◆今村猛(いまむら たける)
1991年4月17日生、長崎県出身。30歳。清峰高-広島(2009年ドラフト1位)。プロ2年目にリリーフに転向すると54試合に登板。2012年には球団新記録となる29試合連続無失点をマークするなど、69試合に登板。オフには侍ジャパン入りを果たし、リーグを代表するリリーフへと成長した。2016年は勝利の方程式の一角を担い67試合に登板し、25年ぶりのリーグ優勝に貢献。リリーフとして球団史上初の3連覇を支えた。2021年12月に現役を引退。