『BLFチャリティートーク2021』の出演選手たち

◆選手たちがオフに続々と支援

 プロ野球のオフシーズンもあと数日で終わり、まもなく球春到来です。東京五輪があって例年よりも一カ月ほど短いオフでしたが、社会貢献活動においてはさまざまな動きがありました。

 前回は日本プロ野球選手会による『選手会ファンド』が設立されたことを紹介しましたが、それ以外にも選手会は病気の子どもとその家族を支援する『公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン』に966万2000円の寄付を贈呈。これは、現役プロ野球選手28名がそれぞれ成績に応じて一定額を積み立てたものの総額です。このように、オフにはさまざまなところで選手による支援のニュースが報じられました。

 私が代表を務めるNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーション(BLF)で支援活動をコーディネートしている選手たちも、それぞれ寄付を贈呈しました。則本昂大投手(楽天)は子どもの教育支援を行う『公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン』に1イニングごとに1万円を積み立てた合計148万円を、千賀滉大投手(ソフトバンク)は、児童虐待防止の『オレンジリボン運動』に1奪三振ごとに1万円を積み立てた合計90万円を、吉田正尚選手(オリックス)は開発途上国の子ども支援を行う『認定NPO法人国境なき子どもたち』にホームラン1本ごとに10万円を積み立てた210万円とファンからのオンライン寄付の16万6909円を合わせて226万6909円を寄付しました。

 BLFで関わっている選手以外にもたくさんの選手がこのオフの期間を活用して、さまざまな寄付を行いました。

 実は、プロ野球のオフでもある12月は、全国規模で寄付の啓発キャンペーンが行われる『寄付月間』に制定されています。普段あまり寄付をする習慣がない人も、一年の終わりに希望ある未来を思い描いて寄付をしてみようというわけです。その期間にこうして多くのプロ野球選手が寄付をすることで、12月に寄付をする取り組みがさらに広がるのではないかと期待しています。

◆参加して楽しい社会貢献

 このオフは、オンラインとオフラインの両方で、さまざまな選手参加のイベントが開催されました。BLFでも毎年恒例の『BLFチャリティートーク』というチャリティーイベントをオンラインで開催し、現役メジャーリーガーを含むプロ野球選手・OB15名が出演してくれました。

 このイベントは、プロ野球ファンの皆さんに、選手たちのトークを楽しみながら寄付を体験していただくことを目的としたもので、チケット代の一部とオンライン寄付が日本財団運営の『夢の奨学金』というプログラムに寄付されます。コロナ禍前の対面開催時には、募金箱に寄付してくださった方向けに選手とのフォトセッションも行っていました。毎年約60~80万円ほどの支援金を、ファンの皆さまからお預かりし、『夢の奨学金』に寄付しています。

 『夢の奨学金』は、さまざまな事情により、里親家庭や児童養護施設など社会的養護のもとで育った子どもが18歳になって自立する際、大学や専門学校などで、学業の機会を得やすくするために作られた給付型の奨学金で、寄付金は全額、奨学生の学費や生活費として活用されます。『BLFチャリティートーク』では、おもにスポーツ選手として進学する学生、スポーツを支える仕事を目指す学生、体育教師を目指す学生が優先的に対象となります(該当する学生がいない場合は、それ以外の学生が対象となります)。

 奨学金プログラムを支援することになったのは、イベントが始まった2018年から毎年出演してくれている和田毅投手(ソフトバンク)や則本投手が、奨学金により大学進学のチャンスをつかみ、プロ野球選手になる夢を叶えたという背景からでした。そして、その思いに賛同してくれる選手が次々と集まってくれたのです。

 このイベントの最大のポイントは〝参加するだけで社会貢献できる〟ということ。チャリティーだからといって気負うことなく、プロ野球ファンであること、プロ野球が好きであるという思いそのものを誰かへの支援につなげられることです。参加者からは毎年のように「大好きな野球を通じて支援ができてうれしい」との声をいただいています。私たちも、寄付月間にこうしたイベントを開催できることに喜びを感じています。

 さあ、まもなく2022年シーズンが始まります。オフはグラウンドの外で輝いてくれた選手たち、今度はグラウンドでの活躍を期待しましょう!

 

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。