4年ぶりのリーグ優勝に向けての大きな課題。それは、鈴木誠也が抜けた4番を誰に任せるか。ただ、その答えを一つに絞るのは難しいのかもしれない。絶対的な本命が不在の中、指揮官が導き出す答えは。今季、カープの4番に求められるものを探っていく。

今季、中軸の期待がかかるプロ15年目の松山竜平

◆あまりにも大きな「穴」は複数の選手で埋めるしかない

 4番・鈴木誠也の穴をどう埋めるのか――。

 2022年のカープにとって、最大の課題がこれなのは間違いない。ただ、冒頭から結論を言ってしまうと「鈴木誠也の穴は埋まらない」が正解だろう。

 厳密には、「一人の打者で穴を埋めるのは不可能」が正しい言い方かもしれない。

 なにせ鈴木誠也は昨季、打率(.317)、出塁率(.433)、本塁打(38本)、打点(88打点)、得点(77得点)でチームトップを記録した不動の4番だ。そう簡単に埋まるほど、穴は小さくない。

 となると当然、前述したように「一人」ではなく「複数の選手」でその穴を埋める必要が出てくる。たとえば、本塁打数――。

 4人の選手が昨季より10本ずつ多く本塁打を放てば「数字上」はその穴は埋まると言える。もちろん、鈴木誠也の存在価値は数字だけで推し量れるものではないが、そうやって個々が少しずつでも数字を上積みしない限り、「鈴木誠也の穴」を埋めることは出来ない。

 とはいえ、打順でいえば4番、守備ではライト。今季このポジションに誰を据えるのかは、おそらくチーム成績にも直結するはずだ。

 そんな“4番”候補の最右翼になるのがプロ4年目の林晃汰だ。昨季は自身初の2ケタ本塁打を放ちブレイク。高卒3年目以内の2ケタ本塁打はチーム史上4人目の快挙だった。

 182センチ、101キロのサイズはいかにも「4番らしい」風格を誇る。確実性、パワーともにまだまだ発展途上なのは間違いないが、「伸びしろ」を考えれば、チーム内でもっとも4番に近い存在なのは間違いない。

 とはいえ、代役4番としてもっともリアルになるのは、やはり新外国人だろう。

 カープは今季、昨季マイナーで32本塁打を放ったライアン・マクブルームを獲得。3Aではバットを折りながらオーバーフェンスの打球を放ったという怪力エピソードを持つ助っ人大砲が、期待通りの活躍を見せれば、林に代表される次期4番候補が成長する「間」をつくることもできるはずだ。

 また、チームが鈴木誠也の幻影を追わずに「新しい4番像」を形成することができるのであれば、西川龍馬も候補のひとりに挙げられる。天才的なバットコントロールはすでにプロでも実証済みで、打率3割というボーダーラインをクリアする可能性がもっとも高い。長打力の面では鈴木誠也には及ばないが、いわゆる「つなぎの4番」のような新イメージを打ち出すことができれば、打線の核になってくれるはずだ。

 安心感、安定感を求めるのであれば、実績を持つベテランに4番の重責を任せるのも選択肢のひとつ。そうなると候補に挙がるのが松山竜平、長野久義の2人になる。

 プロ15年目、今季37歳を迎える松山は昨季、わずか2本塁打に終わり、出場数も7年ぶりに100を切ってしまったが、代打では44打数14安打(打率.318)と集中力の高さを示した。オフには食事制限を徹底し、イチから体をつくり直すなど、今季にかける意気込みは誰よりも強い。4番を打った経験もあるだけに、再びそのバットが火を噴く可能性も十分ある。

 プロ13年目、37歳の長野も昨季は松山同様に苦しんだ選手のひとり。打率、本塁打、打点と主要打撃項目すべてでキャリアワーストを記録してしまったが、打撃センスは誰もが認めるところ。巨人という“常勝軍団”での経験も、チームには不可欠だ。

 ここまでは新外国人のマクブルーム以外、すべて「現有戦力」から4番候補をピックアップしたが、最後にダークホース候補として紹介したいのがドラフト6位入団の末包昇大だ。

 大学時代は公式戦での本塁打がゼロだったが、社会人で鈴木誠也の打撃フォームを参考にして才能が開花。188センチ、110キロという日本人離れした体躯から放たれる打球は、ハマれば「助っ人外国人」並み。キャンプでのフリー打撃でも豪快な柵越えを連発し、紅白戦でも4番に抜擢されるなど首脳陣からの期待も大きい。

 確実性にはまだまだ課題も多く、キャンプ時点では「大穴」なのは間違いないが、プロの舞台にアジャストして、昨年の佐藤輝明(阪神)のようにオープン戦から爆発を見せればまさかの大抜擢もないとは言い切れない。

 若手、中堅、ベテラン、助っ人、新人と「4番候補」を並べてみたが、ここまで多くの名前が挙がるということは絶対的な本命が不在であることを意味する。

「鈴木誠也の抜けた穴」の大きさを改めて痛感するが、どの選手も昨季からの上積みを求められるのは間違いない。

 絶対的存在が抜け、カープの4番争いは「戦国時代」へと突入する。若い力か、ベテランの意地か――。ただ、ひとつだけ言えるのは4番争いが熾烈を極めれば極めるほど、カープの4年ぶりの優勝が近づくということだ。

文/花田雪