4年ぶりの優勝のカギを握る「投手陣」。先発3本柱&クローザーは盤石だけに、それ以外のポジションに若手が台頭すればおのずと結果はついてくるはず。2022年、カープ躍進のカギを握る「若い力」はいったい誰だ!?

今季、先発として復活の期待がかかる5年目の遠藤淳志

◆大瀬良、九里、森下に次ぐ「先発4番手争い」の行方は?

 4年ぶりのV奪還を目指すカープにとって、投手陣の再構築は喫緊の課題だ。

 昨季のチーム失点数589と防御率3.81はともにリーグ5位。同打率がリーグ1位の.264だったことを考えれば、不動の4番・鈴木誠也がチームを去る見込みとはいえ、チーム力が「打高投低」に偏っているのは間違いない。

 FAなどの大規模な補強がなかったことを考えると、当然ながらそこに必要なのは「若手の成長」になってくる。

 先発陣に目を向けてみると、大瀬良大地、九里亜蓮、森下暢仁の3本柱は盤石と言っていい。3投手とも順当なら規定投球回&2ケタ勝利をクリアできるだけの能力を持っており、故障などのアクシデントがない限りは、1年間ローテーションを任せることができるはずだ。

 問題は、彼らに次ぐ4番手以降のローテーション投手。その筆頭格は、高卒3年目を迎える玉村昇悟だろう。

 宮城大弥(オリックス)、奥川恭伸(ヤクルト)、佐々木朗希(ロッテ)らと同学年。2001年生まれの玉村は昨季、一軍デビューを飾ると101回を投げて防御率3.83、4勝をマークした。高卒2年目での100イニング到達はチームでは前田健太以来、実に13年ぶり。打線の援護に恵まれさえすれば、勝ち星はもっと増えたはずだ。今季は新球・カットボールを携え、昨季以上の数字を期待したい。

 玉村と同じ左腕では、6年目・高橋昂也の成長ぶりも頼もしい。左ヒジの手術から復活を遂げた昨季は5勝をマーク。140キロ台中盤の直球にカットボール、フォーク、カーブを交える「左の本格派」からは覚醒の気配を感じ取れる。

 「戦力の上積み」という意味では新人の活躍にも期待したいところだ。昨季は栗林良吏、一昨季は森下と、2年連続でドラフト1位投手がチームの主力となっているが、今季のドラ1・黒原拓未、ドラ2の森翔平も面白い存在になりそうだ。

 黒原は上背こそないが最速151キロの直球が武器の馬力型左腕。左打者にはヒザ元に沈むチェンジアップ、右打者にはクロスファイアと、打者の左右を苦にしない完成度の高さが最大の魅力だ。先発はもちろん、リリーフ適正もあるため、佐々岡監督の采配次第では栗林と「勝利の方程式」を形成する可能性もある。

 森は大学、社会人も経験した即戦力型の左腕。最大の武器はゴロも三振も奪えるというカットボール。ドラフト時には「1位候補」の呼び声も高く、実力的には黒原にも決して劣らない。タイプとしては「先発型」だけに、3本柱に次ぐ「ローテの4番手」を争う存在になってくれることを期待したい。

 また、ダークホース的な存在としては大卒2年目の大道温貴、高卒2年目の小林樹斗にも注目したい。昨季、大道は一軍で24試合に登板。夏場は先発も経験し4勝をあげた。

 また、小林はシーズン最終戦で一軍デビュー。3回2/3を投げて6失点とプロの洗礼を浴びたが、6奪三振と大器の片鱗はしっかりと見せつけた。2投手ともに、シーズン中に一軍昇格、そこからローテ定着といった青写真を描けるまでには成長している。

 リリーフに目を向けると、栗林につなぐセットアッパーの確立が最大のポイントになる。筆頭格は2年目の森浦大輔。昨季はチーム最多の54試合に登板し、17ホールドをマーク。栗林や牧秀悟(DeNA)、佐藤輝明、中野拓夢(ともに阪神)らがいたため、大きな話題にはならなかったが、例年なら「新人王候補」と呼ばれてもいいほどの抜群の成績を残した。同じく17ホールドを挙げた塹江敦哉とともに、不動のセットアッパーを狙ってほしい存在と言える。

 新戦力からはドラフト5位の松本竜也を挙げたい。社会人時代から各球団のスカウトが絶賛した直球のノビと威力はプロでもトップレベル。打者の懐を強気に攻められるメンタルも持ち合わせており、短いイニングで使ってほしいと思わせる存在だ。春季キャンプでは黒原、森とともに一軍に抜擢されるなど、首脳陣からの期待も厚い。

 また、彼らプロ1~2年目の選手の成長を刺激にしてほしいのが、5年目を迎える遠藤淳志。昨季は先発ローテ入りを見込まれながら、首脳陣の期待を裏切ってしまったが、ポテンシャルはチーム若手投手内でも特筆すべきレベル。キッカケひとつで再浮上できる能力を誇るだけに、キャンプ~オープン戦で、首脳陣にしっかりとアピールしてほしい。

 最後に、「若手」ではないが今季の「復活」を期待したいのが中﨑翔太。3連覇を知る元クローザーは近年、度重なる故障に苦しんできたが、昨季は11月の段階で直球の最速が150キロをマーク。二軍でもキッチリと結果を残しており、「完全復活」への準備は整ったと言える。栗林につなぐセットアッパー争いに参戦することができれば、ブルペンにとってこれほど頼もしいことはない。

 若手の成長と、ベテランの復活――。

 これらの要素が折り重なれば、投手王国は必ず復活する。そしてそれは、必然的にカープの「V奪還」にもつながっていくはずだ。

文/花田雪