いよいよ本日、2022年ペナントレースの開幕を迎えるカープ。4年ぶりのリーグ優勝を目指すカープは、エース・大瀬良大地が、4年連続4回目の開幕のマウンドを担う。

 ここでは「カープのエース魂を考える」と題し、2020年にカープOBの大野豊氏に聞いた“理想のエース像”を、前編・中編・後編の3回に分けて再収録する。

 2回目となる今回は、大野氏自身も選手、コーチとして関わりを持った2000年代のエース・黒田博樹、そして2010年代のエース・前田健太という対照的なエース2人を比較しながら、それぞれの投手が持つ共通項を考えていく。

◆黒田博樹、前田健太……エースたちの共通点とは?

プロ2年目の2008年に一軍定着を果たした前田健太。投球面はもちろんのこと、打撃面でも抜群の野球センスを見せていた。

 かつてカープが“投手王国”と呼ばれていた時代、具体的にいうと1980年代後半には、北別府学や川口和久、山根和夫など、エース級の投手たちが数多く在籍していました。

 そして時代が移り変わって平成になると先ほど挙げた投手たちに代わり、佐々岡真司、黒田博樹、そして前田健太というエースたちが誕生しました。読者のみなさんにとっても近年までカープに在籍していた黒田、前田という投手はエースとして活躍していた印象も強いのではないでしょうか。

 私も数年プレーを共にした黒田は順調にエースへの道のりを歩んでいたわけではなく、なかなか苦しい道のりを歩んでいました。

 ただ内に秘めたる闘志は、私自身感じるものがありました。私から見た黒田は、やるべきことをコツコツとやっていましたし、手のかからない後輩でした。彼の場合年数はかかりましたが、それだけ確かな信頼を積み上げてきましたし、カープに対する愛情という側面でもエースと呼ぶにふさわしい投手でしょう。

 一方で前田は天性の才能を持った投手です。投手として必要な要素をすべて持ち合わせていると言っても過言ではない投手です。素材、そしてそれを伸ばす考えと努力を兼ね備えた投手、つまり野球センスが優れていたとも言えます。