ようやく「役者が揃った」と言うべきか――。
コロナ禍により来日が遅れていたカープの新外国人、ライアン・マクブルームが3月20日にチームに合流。MLBのカブスに入団が決まった鈴木誠也の穴を埋める最後のピースが、開幕を前に晴れてチームの一員となった。
昨季はロイヤルズで7試合に出場(8打数2安打)も3Aでは115試合で打率.261、32本塁打、88打点を記録。190センチ、99キロの「THE・メジャーリーガー」という体躯から生まれるパワーが最大の魅力で、昨夏3Aではバットを折りながら打球をスタンドインさせたという怪力エピソードを持つ。
入団会見でも「40本塁打、100打点」を目標に掲げるなど、前評判通りの活躍を見せることができれば鈴木誠也の抜けた4番を任せられるはずだ。
とはいえ、調整の遅れは明らかで3月25日の開幕には間に合いそうにない。まずは二軍で実戦を数試合こなしてから一軍に合流するというのが、現時点で描ける最短の青写真だ。
開幕からしばらくは、新助っ人抜きでの戦いが求められるが、注目したいのがその起用法。左投右打ちの助っ人大砲は一塁、外野を主戦場とするが、今季のカープはこの両ポジションが、レギュラー未確定の群雄割拠の様相を呈している。
まずは、一塁。
現時点でのレギュラー最右翼は昨季打率.315をマークしてブレイクした坂倉将吾だろう。
佐々岡真司監督が正捕手に會澤翼を指名しており、坂倉は一塁でのスタメン出場が有力視される。よほどの不調がなければ坂倉がレギュラーを外されることはなさそうだが、「一塁専任」かというと疑問符も付く。
二軍やオープン戦では三塁守備にも就いており、會澤の調子次第では捕手起用が増える可能性も十分ある。三塁には林晃汰がいるが、一軍での実績が実質1年しかないため、状況次第では坂倉の三塁起用も考えられる策のひとつだ。また、ベテランの松山竜平もオープン戦で調子をキープしており、「開幕一塁スタメン」もないとは言い切れない。
理想は捕手・會澤、一塁・坂倉、三塁・林の布陣だが、絶対的な存在がいないだけに、調整が順調に進めばマクブルームが「一塁レギュラー」として起用されることもあるかもしれない。
続いて、外野起用の可能性はどうか。
開幕を前に、レギュラー確約は西川龍馬ひとりと言っていいだろう。残りの2枠を争うのが、野間峻祥、宇草孔基、大森穂、中村奨成、末包昇大あたりになる。
キャンプ時点では野間、宇草がレギュラーに最も近い存在だったが、ともに打撃の調子が上がらずにレギュラー争いは混沌としている。開幕戦でスタメンに名を連ねるのが誰になるかも注目だが、開幕後にマクブルームが加わればレギュラー争いはさらに熾烈になるはずだ。
規格外のパワーを持つのは誰もが認めるところ。あとは以下に日本野球に順応できるかがカギとなるが、その意味でもポジションは固定できた方が望ましい。
その意味では、ポジションが定まりにくい「一塁」よりは、レフトかライトに守備位置を「固定」させて、なるべく打撃に集中させる方が得策だ。
まだ来日したばかりでその実力は「未知数」だが、自身が掲げた「40本塁打、100打点」をクリアできるようであれば、最大の懸念事項だった「鈴木誠也の穴」は少なくとも数字の上では埋まる計算になる。
開幕まであと数日と迫る中、ついに来日した未知数の大砲。熾烈なレギュラー争いは、開幕を過ぎてもまだまだ続きそうだ。