3月・4月は持ち味の“つなぐ攻撃”が目立った2022年度版のカープ打線。今回はシーズン序盤に活躍した選手を中心にOBの笘篠氏がカープ野手陣について語っていく。
※取材は4月上旬。

俊足が持ち味の大盛穂。足を絡めた攻撃に欠かせない選手の一人だ。

◆選手一人ひとりに求められる最善の状況判断

 機動力という面で見ると、ベンチサイドから選手の背中を押してあげるような野球が展開できているのではないかと思います。そういうチーム状況の中で、宇草孔基や野間峻祥、大盛穂など足を武器とする選手がスタメンに名を連ねるようになれば、さらに盗塁など足を絡めた攻撃も出てくるでしょう。

 今後は、無理に足を使った作戦を取らなくても、『もう1点が欲しい』という場面で、エンドランやバントを効果的に決めながら得点を奪う野球が展開できるのであれば、盗塁の数にこだわる必要もないと思います。

 今後、長いシーズンで勝利を積み重ねていくためには『あと1点を取れる野球』が理想です。とにかく先制点にこだわり、そして『もう1点』にこだわる。さらに試合終盤の1点というのは、相手チームにプレッシャーを与えることができ、味方投手陣を楽にすることもできるので、非常に重要です。

 序盤の戦いで印象に残ったのが、4月5日の巨人戦(マツダスタジアム)です。まずは攻撃的に攻めていきながら、坂倉将吾のタイムリーで先制しました。そして中盤6回に松山のタイムリーなどで2点を奪って勝ち越し。最終的にしっかりと守備を固めていき、中﨑翔太、栗林良吏と磐石の投手リレーで『2点差を守り切って必ず勝つんだ』という姿勢が見られた、非常に投打のバランスの良い試合だったと思います。

 このように、2022年型のカープ新打線はそれぞれの役割を果たしながら機能し、前評判があまり高くなかった評価を覆す戦いぶりを見せています。やはり、そうした周囲の反応というものが選手たちに火をつけてくれた部分もあるでしょう。

 昨年のヤクルトにしても前評判は高くありませんでしたが、選手たちの『見返してやるぞ』という気持ちがチームを優勝へと導いたのだと思います。カープの選手たちも、『見返してやるぞ』という気持ちを持ち続けて戦ってほしいと思います。