プロ10年目のシーズンは、プロ初の開幕スタメンと共に幕を開けた。昨年まではユーティリティープレーヤーとして勝利に貢献してきた上本崇司。レギュラーのチャンスをつかみ取りつつある背景には、考え方の変化があった。経験を重ね、紆余曲折の道のりを経てたどり着いた思考とは。存在感を発揮する、背番号0ならではの哲学に迫る。(全3回のうち2回目・取材は2022年4月上旬)
◆とにかく欲を出さず“為すべきことを為す”
─上本選手自身が、今シーズン、手応えを感じた打席はありますか?
「手応えとかではないのですが、一つあげるなら、開幕2戦目のDeNA戦、田中健二朗投手との対戦です。5回表で2死満塁。カウントは3ボール1ストライク。この場面、今までの僕であれば、バットを振らずに四球を狙っていたと思うんです。ただ、満塁だけに相手投手も四球を出したくない。そうなると真ん中付近に投げてくるだろうと冷静に考えることができました。また、外角の球は打たないと決めていたので、内角寄りの球だけ待ち、そこに来たら必ず振ろうと決めていました。その結果、狙っていたゾーン付近に球が来たので、しっかり捉えることができました(結果は2点適時打)」
─主にセンターでの出場が多いですが、試合によっては内野手としてのスタメンもあります。守備面の準備で心がけていることを教えてください。
「昨季まで、どこでも守れるように練習していたので、試合前のルーティンを含めて、変えていることは特にありません。これまでと同じように、〝いつも通り〟準備することを心がけています」
─10年目の今季、上本選手にとって大きなチャンスが巡ってきているように感じますが、そのチャンスとはどう向き合っていますか?
「実は今の状況をチャンスとは思っていないんです。今年は開幕前から、〝無欲でいる〟ことを心がけてきました。僕自身、特別取り柄がない選手だと思っているので、とにかくチームから求められることに応えていくことだけを考えようと。自分がやるべきことをしっかりとこなしていれば、良い日が巡って来るだろうという思いで準備を続けてきました」
─レギュラーへの思いも、今季はそこまで強くなかったと?
「そうですね。語弊があるかもしれませんが、レギュラーになろうと思っていませんでしたし、とにかく与えられた場所でしっかり仕事をしようという思いだけでした。なので、今シーズンは、とにかく欲を出さず、〝為すべきことを為す〟というスタンスでプレーしています」(続く)
◆上本崇司(うえもと たかし)
1990年8月22日(31歳)/広島県出身/ 170cm・73kg
右投右打/内野手 / 広陵高-明治大-広島(2012年ドラフト3位)