プロ10年目のシーズンは、プロ初の開幕スタメンと共に幕を開けた。昨年まではユーティリティープレーヤーとして勝利に貢献してきた上本崇司。レギュラーのチャンスをつかみ取りつつある背景には、考え方の変化があった。経験を重ね、紆余曲折の道のりを経てたどり着いた思考とは。存在感を発揮する、背番号0ならではの哲学に迫る。(全3回のうち3回目・取材は2022年4月上旬)

ムードメーカーとしての活躍も期待される上本崇司。若手とベテランの架け橋となり、チーム内のコミュニケーションを高めている。お立ち台でのパフォーマンスにも期待したい。

◆チームの雰囲気を良くする新人野手2人の存在

─一軍に若い選手が増えました。若手選手とコミュニケーションをとる上で心がけていることはありますか?

「自分から話しかけることですね。年下の選手からすると、先輩には話しかけにくい面があると思うんです。僕が入団した頃は、そういう雰囲気を感じることもありましたから。それだけに、年上の僕から話しかけるようにしています。長野(久義)さんがそういうタイプの方なので、僕も真似をして、コミュニケーションを図るようにしています」

─中村健人選手に聞いたのですが、一軍ベンチで「ちょうだい!ちょうだい!」というフレーズが流行っているそうですね。

「確かに流行っています(笑)。僕自身の元気は〝偽物〟ですが(苦笑)、健人の元気の良さは〝本物〟ですね。健人はベンチでずっと声を出していますし、そのおかげでベンチが暗くなることはありません。面白くはないですが(笑)、とにかく元気が良いので僕自身も助けられています」

─今年はチームの雰囲気が非常に良いように感じています。

「良いと思いますね。その理由は、新人の中村と末包(昇大)の存在です。二人とも積極的に声を出すタイプなので、彼らの存在が非常に大きいと思っています」

─フレーズでいくと、3月29日の阪神との本拠地開幕戦。試合後、お立ち台に上がった上本選手が発した『やっちゃろうや』も印象に残っています。今季を象徴する言葉になりそうな気がします。

「『やっちゃろうや』は、開幕戦前のミーティングで佐々岡(真司)監督が口にされた言葉なんです。広島弁で、僕自身も好きな言葉なので、言うならここしかないと、お立ち台に上がったタイミングで使わせてもらいました」

─シーズン前の下馬評を覆す開幕ダッシュに4年ぶりのリーグ優勝を期待するファンも多いです。今季、どんなカープ野球を見せていきたいですか?

「やはり球場にファンの方が来てくださり、球場を赤く染めてくださると、選手は本来の力以上のものを出すことができます。そして、なによりもチームに勢いが生まれます。ファンのみなさんと一緒につくる勢いがあるからこそ、劣勢の試合でも諦めずに戦うことができています。このままシーズン終盤までカープらしい最後まで諦めない試合を数多く届けていきたいですね。そして、また、お立ち台に上がらせてもらう機会があれば、『やっちゃろうや』のフレーズを、ファンのみなさんと一緒に言いたいです!」

◆上本崇司(うえもと たかし)
1990年8月22日(31歳)/広島県出身/ 170cm・73kg
右投右打/内野手 / 広陵高-明治大-広島(2012年ドラフト3位)