プロ3年目を迎える森下暢仁が、『エース』への階段を順調に駆け上がっている。佐々岡真司、前田健太から受け継いだ背番号18を背負い、年々凄みを増す投球の背景には、『エース』を目指す強い意志と、つねに上を目指し続けるあくなき向上心があった。

森下暢仁の投球を見守る佐々岡真司監督

◆あくなき向上心が森下の投球を進化させた

(前編から続く)

 古くは1951~1963年まで長谷川良平が、近年では1990~2007年まで佐々岡真司、2008~2015年まで前田健太が背負った『エースナンバー』。

 前田健太がメジャーに移籍して以降は4年間空き番号だった18番を託されたのが、森下だった。

 カープに限らず、日本プロ野球界における背番号18はエースの代名詞と言える。桑田真澄、松坂大輔……、現在では球界最高峰投手の山本由伸も、背番号18を背負っている。

 もちろん、森下も彼らと同様に『エース』になれる器だ。いわゆる右の本格派であることはもちろんだが、プロ入りから先発ローテーションを守り続ける安定感。さらにいえば、あくなき『向上心』も素養のひとつだ。

 冒頭で記した昨年オフの取材で、森下はプロ2年目の2021年シーズンを「ほぼ毎試合、思うような投球が出来なかった」と語っている。24試合に先発して8勝7敗、防御率2.98という数字は先発投手としては堂々たる成績に思えるが、森下はそれを結果オーライだったと言う。

「良い当たりが正面をつくシーンや、満塁で押し出し四球を出してしまうシーンも多くて、勝負所で良い投球が出来ませんでした」

 結果だけを見れば、防御率は3点台以下、163回1/3と規定投球回にも到達した。それでも、森下に満足感はない。

 本格的に投手に転向したのが高校時代で、進学した明治大での4年間で大きく成長。そこからカープに入団し、2年間でここまでの投手になった背景には、つねに上を目指し続ける強い気持ちがある。

 だからこそ、「プロでの3年間でエースに」という言葉が出てくるのではないだろうか。

 本人が語った『3年間』のうち、すでに2年間が過ぎ、今季が3年目。青写真通りなら、今季の投球で『エースと呼ばれる投手』になることが森下の目指すところだ。

 もちろん、その壁は高く、分厚い。チーム内には4年連続で開幕投手を務めた大瀬良、昨季最多勝のタイトルを獲得した九里亜蓮、さらには、昨季プロ初完封を果たし先発左腕として急成長を見せる床田寛樹がいる。彼らは、ともに優勝を目指す『仲間』でもあるが、同時に『ライバル』でもある。

 ただ、12球団屈指の層を誇るカープ先発陣の中で己を磨き、『中心』となることができれば、『エース』への道は開けてくる。

 プロ3年でエースに―。その言葉が現実になる日はそう遠くはないはずだ。