大卒3年目にして投手陣の中心を担う森下暢仁。そんな森下と“同学年”の「1997年度生まれ」の選手たちもまた、一軍定着、レギュラー奪取へ一歩一歩、着実に成長を遂げている。森下を中心にした「1997年世代」への期待値とは。

プロ3年目の今季も先発ローテの柱として活躍を続ける森下暢仁(今季の春季キャンプで撮影)

◆異なるタイプの選手がそろう1997年代生まれの森下世代

 V3時代を経て「世代交代期」に入った感のあるカープ。若手の台頭は目下の課題であり、逆を言えば、若い世代の成長なくしてチームの躍進はない。

 幸いにして、坂倉将吾、小園海斗、栗林良吏といった「新顔」がここ数年で台頭し、若返りは着実に進んでいると言える。

 その中でも特に期待したいのが、今季で25歳を迎える「1997年度生まれ」の面々だ。彼らは高卒なら7年目、大卒なら3年目と、プロ野球選手としては「全盛期」に差し掛かる年齢でもある。

 現在のカープに、1997年度生まれの選手は6人いる。それが、森下暢仁、森翔平、高橋樹也、石原貴規、宇草孔基、中村健人だ。

 世代の中心となるのは、もちろん森下になる。明治大からドラフト1位でカープに入団すると、1年目から先発ローテの一角として10勝を挙げて新人王を獲得。今季で3年目を迎えたが、大瀬良大地、九里亜蓮とともに強力な「先発三本柱」を形成している。

 その森下とドラフト同期入団、同じく3年目を迎えた石原、宇草も「一軍定着」が秒読みの有望株。石原はプロ2年目の昨季、一軍初出場をつかみ、60試合に出場。森下とスタメンバッテリーを組むケースも多く、自慢の強肩とパンチ力を武器に、會澤翼、坂倉将吾の正捕手争いに割って入る活躍を見せた。今季は3月に二軍落ちを経験して開幕一軍を逃したが、キャッチング技術にも定評があり、シーズンが進めば、きっと一軍出場のチャンスも巡ってくるはずだ。

 宇草もまた、「レギュラー候補」のひとり。昨季は43試合に出場して打率.291を記録するなど飛躍を遂げ、キャンプまでは「ポスト鈴木誠也」の筆頭格としても期待されていた。結果的に開幕からレギュラー奪取とはならず、一軍出場機会も限られてはいるが、シーズン中のさらなる奮起を期待したい。

 森下、石原、宇草の同期入団3人はプライベートでも仲が良く、森下&宇草コンビは昨季まで2年連続で同日にヒーローインタビューにも立っている。

 また、この世代で唯一、高卒でドラフト指名されて今もチームに所属しているのが高橋樹也だ。昨季はプロ6年目で自己最多となる27試合に登板し、防御率1.37と確かな手応えをつかんだ。同級生の中ではプロキャリアがもっとも長く、「プロでの先輩」として一軍ブルペン陣にくい込みたいところだろう。

 森、中村のふたりは今季チームの仲間入りを果たしたルーキー。ともに大学、社会人を経てのプロ入り。

 ドラフト2位・森は3月までは「先発ローテ候補」として佐々岡真司監督からも期待をかけられ、二軍でも「先発」で調整中。一軍投手陣が好調なだけに、チャンスがいつ巡ってくるかは分からないが、まずはしっかりと「プロ仕様」の投球を身につけ、来るべき「一軍デビュー」へ備えたいところだ。

 ドラフト3位の中村は中京大中京高、慶応大、トヨタ自動車とアマチュアで名門を渡り歩いた「エリート」。慶応大時代にはリーグ本塁打王も獲得するなど、「長打」が魅力の外野手だ。今季は開幕一軍をつかみ、3月27日にはプロ初スタメンに抜擢。3月30日にはプロ初安打を放った。同期入団でドラフト6位、学年は1つ上の末包昇大が開幕からスタメンに名を連ねているが、同じルーキー外野手として中村も負けてはいられない。

 森下を除く5人は、まだまだ一軍での実績が乏しい「これから」の選手ではある。ただ、近未来のカープを考えた時、彼らの飛躍は絶対に必要になる。

 石原が正捕手争いに参戦し、宇草が期待通り「ポスト誠也」の座を射止めることができれば、森下・石原・宇草のセンターラインが実現する。高橋は左のリリーフ、森は左の先発、中村は強打の右打ち外野手と、選手としてのタイプに「かぶり」がないのもこの世代の特徴だ。

 2016年からのカープ3連覇を支えたのは野村祐輔、田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、安部友裕といった「1989年世代」の選手たちだった。彼らもまた、「1997年世代」と同様に、選手としてのタイプも、プロ入りまでのキャリアもバラバラだったが、異なるプロセスを経てカープというチームに集い、プロとしての「全盛期」を迎える20代後半にチームを優勝へと導いた。

 1997年代生まれの彼らがそうなれるかどうかはまだ分からない。ただ、世代のトップランナーである森下が5人を牽引するような投球を見せれば、そのレベルは必然的に底上げされるはずだ。いわゆる「黄金世代」には必ず、中心となるスターがいる。

 近い将来、森下に引っ張られる形で同世代の選手が台頭するようなことがあれば、「カープ黄金期」が再び訪れる可能性はグッと高まるだろう。