4年ぶりの優勝を目指す上で、栄光と葛藤を知る男たちの経験は必要不可欠。カープには勝者のメンタリティを持つ経験者たちが数多くいる。今季、復活を懸け、鍛錬を重ねている選手の現在地に迫る。

今季、15年目のシーズンを迎えた松山竜平

◆開幕4番スタートも控えに。もう一度、理想の打撃を取り戻す

 今季のペナントレース開幕戦。4番に座ったのはプロ15年目の松山竜平だった。2安打を放つ活躍で開幕勝利に貢献。翌日の開幕2戦目もマルチ安打を放ち、4番として存在感をみせた。

 昨季の悔しさが松山の意識を変えた。自主トレでは6キロ近い減量に成功し、生まれ変わった体で春季キャンプに臨んだ。キャンプ中に松山を取材した際、今季に懸ける意気込みをこう話していた。

「しっかり動くことができないと、守備や走塁だけではなく、打撃にも影響が出てしまうことを痛感した2021年でした。自主トレで減量に取り組んだのも、昨季痛感したことを変えようと思ったのが一番の理由です。シーズンを通してしっかりと戦えるように、オフの間に体をつくり上げてきました」

 キャンプは二軍スタートも、開幕前に一軍に合流。そのまま4番としてシーズンに突入した。しかし、4番でのスタメンは長くは続かなかった。新外国人のマクブルームが一軍に合流した3月29日の阪神戦以降、スタメン出場が減少。代打の切り札として控えることが増えた。追い打ちをかけるように、4月15日には新型コロナウイルスの陽性判定を受け離脱。2週間足らずで一軍に戻ってきたが、復帰以降、安打は2本のみ。松山にとっては葛藤の日々が続いている。

 ただ、広角に巧みに打ち分ける松山の柔軟な打撃は、上位をキープするうえで欠かせない武器であることは間違いない。松山が理想としているのは2016年の新井貴浩の“つなぐ打撃”。19本塁打で101打点という数字が示すように、打線の主軸として、いかに〝つなぎ〟を意識していたかを数字が証明している。

「新井さんは長距離打者のイメージもありますが、〝チームを活かす打撃〟ができるのが新井さんのすごさだと思っていました。走者を次の塁に進め、後続打者に託す。そういった、チームの勝利につながる打撃ができる打者が理想です」

 今季のカープは、あの頃と同じように“つなぐ攻撃”でリーグ随一の安打数と得点数を記録している。そこに松山が調子を取り戻せば、さらに威力を増す。

「3連覇した頃は、負けている試合でも選手が気持ちを切らしていなかったからこそ、流れを変えることができたと思います。そういう意味では、僕たちベテランを含めて、ベンチにいる全員で、良い雰囲気をつくり出していきたいですね」

 昨季の悔しさを晴らす雪辱のシーズンを歓喜で終えるため、求められる役割に備え、もう一度、理想の打撃を取り戻す。