4年ぶりの優勝を目指す上で、栄光と葛藤を知る男たちの経験は必要不可欠。カープには勝者のメンタリティを持つ経験者たちが数多くいる。今季、復活を懸け、鍛錬を重ねている選手の現在地に迫る。

二軍で調整を重ねる中﨑翔太。一軍昇格が待たれる。

◆実績豊富な中﨑の復活は、勝負の夏に挑むチームに必要なピース

 ケガからの完全復活に向けて順調なスタートを切った。春季キャンプ、オープン戦と結果を残したことで、勝ち試合の8回を託されるセットアッパーの役割を勝ち取った。3月25日のDeNAとの開幕戦で今季初登板を果たすと、1回をわずか4球で無失点。完璧な投球で復調をアピールすると、4試合連続で無失点リリーフを見せるなど、安定感溢れる投球でチームの開幕ダッシュに貢献した。

 悔しい結果に終わった過去2年との大きな違いは球の強さ。中﨑翔太の持ち味である打者の手元で微妙に変化する力強い直球が、かつてのような威力を取り戻したことで、中﨑本来の投球スタイルに近づきつつあった。

 しかし4月6日の巨人戦で吉川尚輝に逆転本塁打を打たれ敗戦投手となってから安定感が影をひそめていくことに。以降も大事な場面での登板を託されたが、4月12日のヤクルト戦では勝ち越し点を奪われ、同じく4月28日のヤクルト戦では、3連続四球から痛恨の同点打。大量失点につながる結果を招いてしまった。リベンジを期した4月30日の中日戦でも失点。いずれも8回のマウンドでの出来事だった。

 セットアッパーの役割を全うすることができず、翌日から二軍での調整を余儀なくされた。 14試合の登板のうち、四球を許したのは前述のヤクルト戦2試合のみ(4月12日・28日)。ただ、いずれの2試合も四球が勝敗を決定づける失点につながることになった。4月だけで4敗。失点を喫した4試合全てでチームの黒星を増やしてしまった。大事な場面で投げるリリーフが背負う宿命とはいえ、2016年からのリーグ3連覇に守護神として大車輪の活躍で貢献した中﨑だけに、その結果は到底納得のいくものではないだろう。

 5月から二軍で再調整となるなか、5月10日のソフトバンク戦で約2週間ぶりに実戦マウンドへ。2者連続三振を奪うなど、1回を無失点に抑え再スタートを切った。ここまで一軍で積み上げてきたセーブ数は115。その実績と修羅場をくぐってきた経験が、4年ぶりのリーグ優勝を狙う一軍に欠かせないのは誰もが知るところ。信頼を勝ち得てきた投球を取り戻すことができるかがチームの命運を握っていると言っても過言ではない。

 カープの今季のイニング別失点数を見ると8回の失点が一番多く、昨季同様に8回を投げる投手を確立することが課題となっている。それだけに、二軍の由宇で汗を流し、逆襲の機会を虎視眈々と狙う実績豊富な中﨑の復活は、勝負の夏に挑むチームに必要なピースとなる。