2022年度版のカープ打線はクリーンアップが固定されている一方で、その他の打順は流動的。得点力アップに向けてのカギをOBの笘篠賢治氏に語ってもらった。
※取材は5月上旬。

2番打者として、つなぐの働きをこなす菊池涼介(今年の春季キャンプで撮影)

◆1番・3番・5番の『奇数打順』が重要になってくる

 3番に定着した西川の打撃は、球をうまく呼び込むことができているのが特徴です。自分から球に近づいていくのではなく、タイミングをとって、相手投手の投げた球を自分の得意なポイントに呼び込むような待ち方ができています。

 いわゆる「ボールが止まって見える」という、打者としては理想的な待ち方ができているのではないでしょうか。西川は細かい変化球にも対応できますし、バットコントロールも非常に良い選手です。このままの調子を保って活躍してほしいと思います。

 西川が好調であるだけに、彼の前を打つ1・2番の役割がより大きくなってきますが、その点では西川に変わって4月後半から1番に入った堂林翔太が、良いところでホームランを打つなど非常によく頑張っていると思います。開幕から馴染みのある2番を任されている菊池涼介も『1・2番タイプ』ですし、良いアピールが続く上本崇司は選球眼が良く出塁率も高く、複数ポジションに対応できる器用な選手ですから、1番向きといえるでしょう。

 選手にもそれぞれタイプがありますから、リードオフマンの役割をしっかりと果たしてくれるタイプの選手を1・2番に置き、長打や一発が期待できるタイプの選手をクリーンアップに起用することで、より爆発的に点が取れるようになるのではないかと思います。

 ここまでの負けてしまった試合を振り返ると、一発に泣いた試合が多くありました。各チームの主軸打者が徐々にゲーム感覚に慣れてホームランを打つようになり、「主砲の一振りで試合がひっくり返る」という展開が増えてきているわけですが、その一方で、今のカープには、「ホームラン一発で逆転」という戦い方はなかなか難しい部分もあります。この先もしばらくはコツコツと得点を重ねて、1試合、1試合勝ちを積み重ねる野球をしていくことになると思います。

 個人的には1番・3番・5番の『奇数打順』が重要になってくると思います。現在は3番・西川、5番・坂倉将吾で固定されていますから、あとは「誰が1番に起用されるのか」という点がポイントになってくるのではないでしょうか。相手にとって、もっとも嫌な1番打者ははたして誰なのか。3番・5番同様に、できれば1番打者も固定したいところではありますが、相手チームとの相性や選手の状態を見ながら、しばらくは流動的になるのではないかと思います。対戦相手によっては、堂林や菊池、あるいは田中広輔を1番に起用するといった方法も考えられるかもしれません。

 今シーズンは、『つなぐ』ことができる打者、高い出塁率を残せる打者が、打線の鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。下位がチャンスを生んだときに、得点につなげることができるのは一体誰なのか。ここまでの試合を見ていると、さまざまな試行錯誤をしながら、最適のオーダーを組もうとしているのではないかと感じます。チーム一丸で粘り強く戦って、勝ちを積み重ねていってほしいですね。