新戦力や若手の躍動で開幕から好調な戦いを見せるカープ。4年ぶりの優勝も目指せる陣容がそろったが、長いシーズンを勝ち切るためには「優勝」を知るV3戦士たちの力が必要になるときが、必ずやってくる。田中広輔、野村祐輔、中﨑翔太のような「勝利を知る」存在が本来の実力を発揮するとき、はじめて悲願の頂点への道が開けるはずだ。

2016年に16勝をあげ、最多勝のタイトルを獲得した野村祐輔

◆経験と存在が、大きな力を与えてくれるタイミング

(前編から続く)

 栄枯盛衰のプロ野球において、「血の入れ替え」「若手の台頭」は避けて通れない。わずか4年しか経っていないが、3連覇を果たした2018年と現在では、チームの顔ぶれも、選手の立ち位置も変化している。

 菊池涼介、丸佳浩と不動の1~3番を担った田中広輔は、2019年に極度の不振にあえぎ、現在ではショートのレギュラーを小園海斗に譲る形になっている。クローザーとして3年連続で胴上げ投手となった中﨑翔太は勤続疲労や故障もあり、ここ数年は一軍登板機会が激減。2016年に16勝を挙げ、エースとして優勝に貢献した野村祐輔はプロ10年目の昨季、自身初めてシーズン未勝利に終わった。

 彼ら以外にも、安部友裕、中田廉、一岡竜司など、3連覇を支えた選手たちが中堅・ベテランとなり、かつてのような輝きを見せられていないのも現実だ。  しかし、である。残りのシーズン、激しさを増すであろう優勝争い、Aクラス争いを勝ち抜くためには、「優勝」を知る彼らの力が間違いなく必要になってくる。

 現在の主力でいうと、森下、栗林良吏、小園、末包、中村健人らは3連覇以降にチームに入団した選手。坂倉、床田といった面々は当時からチームに所属してはいたが、チームの中心として優勝に貢献した経験はない。

 結果を残した選手であっても、シーズン佳境の「負けられない試合」を戦い、そこで「勝利」を味わったことのある選手と、そうでない選手には間違いなく「差」が生まれる。

 特にプロでの実績がまだ浅い若手は、その傾向が顕著だ。昨季レギュラーをつかんだかに思えた小園、林晃汰といった高卒4年目の選手が今季苦しんでいることからも、「プロで安定した結果を残す」ことがいかに難しいかが透けて見える。

 小園は開幕から我慢し適用されているが、打率が2割に満たない日々が1カ月以上続くなど、プロの壁に苦しんでいる。まだスタメンから外すタイミングではないが、不振が長く続けば、当然ながら“代わり”が必要になってくる。そんなときこそ、不動のショートとして修羅場を経験し尽くしている田中の力が必要になってくるはずだ。

 昨季、新人ながらクローザーに座って新人王を獲得した栗林は今季も不動の守護神を任されているが、1年目ほどの圧倒的な投球は見せていない。抑えをそう簡単に代えるとは考えにくいが、そこにつなぐまでのセットアッパーの役割は昨季以上に重要になってくる。

 そう考えるとリリーフとして痺れる場面を数多く抑えてきた中﨑の経験と存在が、チームのリリーフ陣に大きな力を与えてくれるタイミングも、必ずやってくるだろう。

 3連覇時とは与えられる役割も、チーム内における立場も違う。それでも、彼らの力が優勝に不可欠なのは間違いない。

 一軍の控えや二軍から虎視眈々と復活の機を伺う3連覇を知る選手たちが本来の実力を発揮した時、4年ぶりの頂点はさらに現実味を増すはずだ。