2021年のシーズン終了後に残ったのは、打率1割台、0本塁打という厳しい現実だった。しかし、幾度も壁を乗り越えてきた男は、胸の内で捲土重来を期している。プロ13年目、悔しさを力に変えて再出発を切った背番号7が胸に秘めた逆襲への思いに迫る。
※取材は5月上旬

30歳を超えた堂林が20代前半の若手とレギュラーを争うことは、自ずとチーム力の底上げに直結していく。

◆胸の中に居座っている、3連覇のときに味わった悔しさ

(前編から続く)

─結果の面でいくと昨季は悔しい1年に終わりました。今季を迎えるにあたり、プレー面や考え方などで昨季から変えたことはありますか?

「特に変えたことはありません。自分の中で決めているのは、昨季の失敗をマイナスにならないようにしていくことです。昨季の悔しさを今季に活かしていけるように心がけていますし、今シーズンが終わったときに、昨季があったから今季につながったと思えるようにプレーしていきたいです」

─プロ13年目で30歳。20代の頃と比べて心境の変化はありますか?

「そうですね……周りを見渡せば、自分より若い選手ばかりなので、試合に出たときは結果を残さないといけないと一層強く思うようになりました。逆に結果が全てと割り切れている部分がいいのかもしれないですね。もちろん内容も大事ですけど、結果を出さないと試合で使ってもらえませんから。とにかく結果を出して自分の存在を示していきたいと思っています」

─20代の頃は、結果以上に、より良い内容を求め過ぎてしまっていたと?

「うーん……今も内容を求めていないわけではないのですが、アプローチの面で、より結果にフォーカスして取り組むようになりました。今季は、スタメン出場が続く前から練習で良い内容が続いていたので、スタメンで出たときも、〝練習通りやればいい。そうすれば自然と結果も出るはず〟と考えられるようになりました」

─チームは5月中旬に首位に立つなど、開幕から順調に勝ち星を重ねています。これまで以上にベンチの雰囲気も良いように感じますがいかがですか?

「すごく良いですね。特にルーキーの中村(健人)と末包(昇大)が、声でチームを盛り上げてくれています。昨季までと違い、負けていても一気にベンチが暗くなることもないですし、良い雰囲気のなか、最後まで諦めることなくチーム一丸となって戦えていると思います」

─今年は九里亜蓮投手と共にチームの副会長を務め、選手会長の大瀬良投手を合わせた同学年3人で、チームをまとめる役割も期待されています。

「同学年3人に大事な役割を任せてもらっているので、なにかあったらしっかりコミュニケーションをとっていこうという話はしています。ただ、今季に関してはここからでしょうね。いま、チームは良い位置で戦えているので、負けが続き苦しくなったときに、チームのためになにができるかが大事になってくると思います。僕の場合は、言葉で引っ張るタイプではないので、試合でのプレーや普段の立ち居振る舞いで示していけたらと思っています」

─一軍メンバーを見ると、2016年からのリーグ3連覇を主力として支えた田中広輔選手や巨人で長年にわたりレギュラーを務めた長野久義選手が、献身的にチームを支えています。そんな先輩たちの姿は堂林選手の目にどう映っていますか?

「それはもう〝心強い〟の一言に尽きます。広輔さんとは、なにかあったら話をさせてもらっていますし、3連覇にレギュラーとして貢献された方なので得るものは大きいです。チョーさん(長野)も巨人で3連覇(2012年〜2014年)を経験されているので、僕も頼りにすることが多いです。頼り過ぎてはいけないという思いもありますが、間違いなく今のカープに必要な存在だと思います」

─リーグ3連覇時は、広島の街も大いに盛り上がりました。あの3年間は、今の堂林選手にどんな影響を与えていますか?

「僕は3連覇の頃は、数多く試合に出ていたわけではないので経験や影響を語れるような存在ではないと思っています。一軍ベンチには入っていましたがグラウンドにはいなかった、その悔しさはずっと胸の中に居座っています。だからこそ、次こそは、結果を残したうえで優勝メンバーの一員になりたいと強く思っています」

─GWに開催された巨人3連戦は3日間全て満員になるなど、今季は、ファンの方が球場に足を運べる日常が戻ってきました。約3年ぶりに赤一色に染まった球場でプレーする気持ちはいかがですか?

「一昨年、去年とは違う緊張感がありますね。こうやってたくさんのファンの方に応援してもらえることは選手冥利に尽きますし、やっぱり大きな力になります。良い雰囲気のなかで野球をやらせてもらえていることに感謝しています」

─プロ13年目。最後に、昨季の悔しさを払拭する逆襲のシーズンを戦っていくうえで大切にしていることを教えてください。

「今季はスタメンで使ってもらえる試合が増えましたが、そうなる前から、どんな状況でも、やるべきことを〝毎日コツコツと継続する〟と決めていました。ずっと状態の良さが続けばいいですが、そう上手くはいかないので、例え状態が悪くなったとしても、その〝コツコツ〟だけは忘れず、最後まで諦めることなく戦っていきたいです」