ライバル・巨人から電撃移籍を果たして、今季で4年目。カープの背番号5・長野久義は移籍後、決して順風満帆のキャリアを積み重ねているわけではない。それでも、その存在が、4年ぶりの優勝を目指すチームに必要になるときは必ずやってくる―。

今季プロ13年目を迎えた長野久義

◆『常勝』を知る長野の存在がカープにもたらすもの

 赤ヘルも、赤いユニフォームも、すっかり板についてきた―。

 2019年1月7日、FA(フリーエージェント)で巨人に移籍した丸佳浩の人的補償選手として、〝長野久義〟のカープ入りが発表されたとき、ファンはもちろん、多くの人が驚きの声を挙げた。

 2009年ドラフト1位で巨人の指名を受け、プロ1年目からレギュラーに定着して新人王を獲得。2年目には首位打者、3年目には最多安打のタイトルを獲得し、巨人の中心打者として、常勝軍団を支え続けてきた。

 カープに移籍する前年も116試合に出場して打率.290、13本塁打をマークするなど、バリバリのレギュラーとしてプレーしていた。そんな男が、“まさか”の形でカープの一員となった。

 あれから3年―。数字だけを見ると、カープ・長野久義の成績は、満足できるものではないかもしれない。移籍1年目は慣れない起用法もあり、プロ入りから続けてきた2ケタ本塁打が9年で途切れた。

 2年目の2020年は代打の切り札としても活躍し、2年ぶりの2ケタ本塁打、代打打率.440(25打数11安打1本塁打)をマークするも、3年目の昨季は打率.216と、キャリアワーストを記録する悔しいシーズンになってしまった。

 それでも、4年ぶりの優勝を目指すチームにとって、“長野久義”の存在は不可欠だ。理由は、いくつかある。

 まず一つは、純粋にプレーヤーとしての“力”。鈴木誠也が抜け、長打力不足が心配されたカープ打線は、良い意味で開幕から周囲の予想を裏切る爆発ぶりを見せている。6月22日時点でチーム打率はリーグトップだ。

 4月下旬から1番打者に定着したプロ13年目の堂林翔太やルーキー・末包昇大、プロ10年目を迎えた上本崇司らの活躍も大きいが、この好調がシーズン終盤まで継続するとは限らない。打線が苦しんだとき、実績のある長野の力が必要になるときが、必ず来るはずだ。

 また、得点をあげることができているだけに大きな問題にはなっていないが、リーグ最少の本塁打数は気になるところ。この部分は、やはり鈴木誠也の穴が完全に埋まり切っていない証左だろう。当然、一発も放てる右の中距離打者・長野が本来の実力を発揮できれば、その穴も幾分か埋まるはずだ。

 加えて、長野が持つ“経験”と“リーダーシップ”もチームの優勝には不可欠だ。巨人時代には2012~2014年までリーグ3連覇を経験。現在のカープにも2016年からの3連覇を経験した選手は多いが、長野の場合、巨人に在籍した9年間でAクラスが実に8度。『常勝』を知る長野の存在が、復権を目指すチームに大きな力を与えてくれるに違いない。(後編に続く)