ライバル・巨人から電撃移籍を果たして、今季で4年目。カープの背番号5・長野久義は移籍後、決して順風満帆のキャリアを積み重ねているわけではない。それでも、その存在が、4年ぶりの優勝を目指すチームに必要になるときは必ずやってくる―。

若い選手が増えたチームに長野久義の存在は大きな力となる。

◆同僚のプレッシャーを緩和する〝長野流〟コミュニケーション

(前編から続く)

 カープ移籍後、チームは3年連続でBクラスに沈んでいるが、長野のキャリアでこれは初めてのこと。当然、胸に期するものもあるだろう。

 “リーダーシップ”の面でいうと、実は周囲の印象と本人の“自覚”には乖離する部分もある。筆者は2019年オフに別媒体で長野をインタビューしたことがあるが、本人は自身の性格を〝人見知り〟と語る。

 巨人、カープ時代を通して、常に〝良き兄貴分〟の印象が強いだけに意外だったが、本人は「人見知りだからこそ、相手を知ろうと意識します。そうすると、相手も僕を知ろうとしてくれる。チーム内の立ち位置も、決してみんなを引っ張っていくようなタイプではない。若い選手を後ろから見ながら、足を引っ張らないようにプレーするだけです」と分析している。

 今季、新外国人のマクブルームが一軍に合流した際、自ら率先してコミュニケーションを図る長野の姿を目にした。希望と不安を胸に日本にやってきた助っ人にとって、長野のさりげない心遣いは重圧を和らげる要素になったことだろう。あくまでも一例だが、グラウンド内外に関係なく、チームメートと積極的に交流するのが〝長野流〟だ。

 本人は認めないかもしれないが、その姿はやはり“リーダー”そのものだ。カープ移籍1年目のオフには保有していたFAの権利を行使せずにチームに残留。その“カープ愛”は、生え抜き選手のそれとなんら変わりはしない。

「カープに来て一番感じたのが、本当に広島の人たちは、“みんな”がカープファンなんだということです。スポーツニュースはカープ一色ですし、広島という街全体でカープを応援してくれています。マツダスタジアムでの声援も本当に力になります」

 これも、筆者がインタビューで本人から直接聞いた言葉だ。

 巨人の人から、カープの人へ―。

 今季、チームに長野久義の力が必要になるときは、必ずやってくる。