広島は6月27日、パドレス傘下3Aを自由契約になっていた秋山翔吾の入団を発表し、6月30日にマツダスタジアムで入団会見を行った

 秋山といえば、言わずと知れた安打製造機。西武時代は首位打者を1度、最多安打を4度獲得し、西武の「山賊打線」のキーマンだったスタープレーヤーだ。秋山が広島を選んだことに驚きを隠せないカープファンも多いはず。これまではFA制度に泣かされることも多かったが、新球場建設、リーグ3連覇を経て、広島も「選ばれる球団」になったのだ。

 今年4月に34歳を迎えた秋山はカープで復活できるのか。改めてアメリカでの3年間と過去の日本復帰組の成績を見ていきたい。

入団会見でカープのユニホーム姿を披露した秋山翔吾

◆泥臭さを見せたアメリカでの3年間

【2020年】
54試合 打率.245(155打数38安打)0本塁打 9打点 7盗塁

【2021年】
88試合 打率.204(183打数33安打)0本塁打 12打点 2盗塁

 2020年に3年総額2100万ドルの契約でシンシナティ・レッズに入団した秋山。イチロータイプの安打製造機と期待されていたが、目立った結果は残せなかった。

 一つ目の原因はスタートダッシュの失敗だ。2020年は新型コロナウイルスの影響で7月下旬まで開幕がずれ込んだが、8月までの約1ヶ月で打率.196、出塁率.282とフィットできず、チーム内での序列が外野手の4~5番手の位置に後退した。

 メジャー独特の「シフト」も影響した。センター返しの名人である秋山に対し、メジャー各球団は内野を右に寄せ、センターラインを潰すシフトを敢行。センターに抜けそうな当たりがサードゴロになってしまうケースもあった。

 実は日本時代も日本ハムがこのシフトを採用したこともあり、ヒントになったのかもしれない。球団にもよるがメジャーの場合、様子見はなく、とりあえずシフトを敷き、あとから修正する。結果的に秋山はリズムを乱され、出端をくじかれてしまった。

 9月には月間打率.317、出塁率.459を記録したが、これはアジャストした結果。追い込まれてもカットして粘り、流し打ちをたびたび見せることでシフトを解いていったのだ。

 昨季は巻き返しが期待されていたが、左太もも裏の故障で出遅れ、その間にレッズ外野陣はガッチリと固定。さらに日本時代のラスト2年の対左投手打率が少し落ちることから「対右投手専用の左翼手」として、プラトーン起用された。

 打撃の粘りはあったものの、やはり慣れない起用法で波に乗れず。メジャー特有のシンカー系(日本でいうツーシーム、ムービング系)のボールに対応できず、最終的に0本塁打でフィニッシュした。

 3年契約最終年の今季はオープン戦でラストチャンスが与えられたが、打率.182と調子は上がらず、レッズを自由契約になり、パドレスとマイナー契約を結んでいた。

◆出場機会が増えれば数字を残せる!

 メジャー挑戦は残念な結果に終わったが、年齢的にも我慢してもらえる立場ではなく、日本のファン目線では、やや不遇だった印象もある。

 しかし、今季は3Aで16試合に出場し、打率.343、3本塁打、出塁率.378とヒットを量産しており、やはりまとまった打席があれば、数字を残す選手だ。

 ただ、メジャーのように動きまくるシンカーはないとはいえ、セ・リーグ他球団もメジャーに倣い、秋山潰しの策を繰り出してくるだろう。

 メジャー時代に片鱗を見せた「粘りのスタイル」を日本で開花させられるか。トランスフォームした姿を楽しみに待ちたい。

◆アメリカ帰りで復活した日本人選手

 日本とはまったく異なる苛烈な競争原理が働くアメリカ球界。実力はあるにも関わらず、一時の不調や負傷、年齢を理由に、バッサリとカットされてしまう選手も少なくない。

 過去に例を求めると、現日本ハム監督の新庄剛志も「日本で復活組」だ。

 メジャー3年目の2003年は左太ももの故障もあり、メジャーでは62試合の出場で打率.193、1本塁打に終わったが、実は3Aでは36試合で打率.324、3本塁打と復活の兆しを見せていた。

 そして、日本ハムに加入した2004年は123試合で打率.298、24本塁打と自慢のバットが蘇った。

 出場機会の面では元日本ハムの田中賢介も好例。メジャー挑戦2年目の2014年はマイナー暮らしに終始したが、3Aで62試合に出場し、打率.258、4本塁打、出塁率.340をマーク。

 2015年に日本ハムに復帰すると、134試合で打率.284、4本塁打、出塁率.284と変わらぬしぶとさを見せた。

 秋山も日本で見事に復活を遂げられるか。カープと秋山の巻き返しに大いに期待したい。