カープの助っ人外国人では最長となる7シーズン在籍し、球団歴代2位の133本塁打を放ったエルドレッド。 退団後は、外国人選手としては異例となる引退セレモニーが開催されるなど、人望も厚かった。

 現在も駐米スカウトとして、カープのために奔走しているエルドレッド。2022年には鈴木誠也に代わる主砲として、マクブルームをスカウトしたことで再びファンの注目を集めた。

 球団史に残るスラッガーが日本で成功を収めた理由。それは、どんな時も諦めない“全力プレー”にあった。(後編)

球場ロッカールームでインタビューを受ける現役時代のエルドレッド氏。

◆自らの胸に抱き続けたメッセージ。「常に諦めるな。全力でプレーしろ」

 MLB時代も含めて長い野球人生を過ごしてきたエルドレッドが、プロ野球選手として、常に大事にしてきた教えがある。

 それはアメリカのマイナーリーグでプレーしている頃、コーチから言われた『常に諦めるな。全力でプレーしろ。1回1回のプレーが新しい機会なんだから』というメッセージだ。

「その言葉を胸に、現役中はずっと全力プレーをすることを大事にしてきました。もちろん、若い頃からそれを意識していましたが、特に年齢を重ねるにつれて、この気持ちは強くなっていきました。1試合の中で2三振、3三振したときに、次の4打席目に入るときに『常に諦めるな』という言葉を思い出し、開き直って全力でスイングする、プレーするということを心がけてきました」

 エルドレッドがカープで結果を残し、選手からもファンからも愛され続けた理由、それは常に全力でプレーするひたむきな姿勢にある。そして、野球に懸命に取り組む姿勢は、新しく入団してきた外国人選手にも大きな影響を与え、チームと新外国人選手を結ぶ架け橋となっていった。

 その影響力も評価され、2019年夏に現役を引退すると、カープのアメリカ駐米スカウトに就任。今は球団スタッフとしてチームを支えている。今季カープで活躍するマクブルームは、スカウト・エルドレッドが担当した選手となる。

「カープ球団から『スカウトをやってみないか』と打診を受けてとてもうれしかったです。これはすごく良い機会、チャンスだと思いましたし、今後もカープ球団と関係を継続できるというのは、とても素晴らしいことです」

 スカウトした選手に自らの日本での成功体験を伝え、その選手が日本で躍動するのはファンの誰もが望むところだろう。

 エルドレッドがどんな選手をカープに届けてくれるか、今後も楽しみが絶えない。

《プロフィール》
ブラッド・エルドレッド
1980年7月12日生、アメリカ出身
フロリダ国際大-パイレーツ-ロッキーズ-タイガース-広島(2012年途中〜2018年)

2012年シーズン途中にカープ入団。貴重な長距離砲として打線の核として活躍。2013年は序盤に故障離脱したものの、初のCS進出に大きく貢献。来日3年目の2014年には37本塁打をマークし、本塁打王に輝く。2016年には来日通算100本塁打を記録。日本シリーズでは3試合連続本塁打を放ち、敢闘賞を受賞した。2018年シーズンオフにカープを退団。その後NPB復帰を目指したが、2019年夏に現役引退を決断。その後、カープ球団の駐米スカウトに就任。
在籍7年は球団在籍外国人選手では最長。
通算133本塁打はライトルに次いで、球団歴代2位の記録。