◆選手として一番重要なこと

― カープやプロ野球を取り巻く環境が、昨年と今年ではずいぶんと違うように思うのですが、どのように感じていらっしゃいますか。
緒方「環境的にはそれほど変わっているとは感じていません。ただ昨年プロ野球には球界再編など様々な問題がありましたから、球界全体が『ファンを大切にしよう』という事を意識してきたとは思います。だからカープで言えば昨年と違った形としてファンサービスを選手会も球団側も一緒に企画してやっています。でも一番重要なのは、プレー自体を本当に必死でやって、最後まであきらめない姿をファンに見せる事ではないでしょうか。それがファンの気持ちに応えて、ファンを大切にすることではないかと思っています」

― 年齢は野村さん、佐々岡さんに次いで3番目ですが、19年という所属年数は現役最長です。緒方さんにとっては、カープでの素晴らしい思い出がたくさんあるかと思いますが。
緒方「19年目といっても、自分の中ではそれほど長くやっているという気持ちはありません。僕の場合は、これまでにケガとかで試合から離れていた時期も結構ありましたからね。身体的にはまだまだ十分にプレーできるという自信はあります。常に自分の中で『まだまだ妥協したくない』という気持ちが練習の時からありますし、試合に臨む時はもちろん100%の力を出す事だけを考えてやっています。1つの試合に『勝つ事』というのは本当に難しく、苦しい事です。逆に負ける事というのは簡単です。今日まで野球をやらせてもらっている中では、うれしさや楽しさよりも、野球の奥の深さや、難しさという事ばかりを教えられているように思います」

― 緒方さんの今シーズンのテーマというものがあれば教えていただきたいのですが。
緒方「今年は自分の中で、もう一度『走攻守すべてにおいて動ける選手』としての姿を見せたいという事があります。そのためにヘルニアの手術をするという決断もしました。若い時のように盗塁が40個も50個もできる事はないと思いますが、動けるという事は盗塁をする事だけではありません。ただ打つ事だけではなく、守備にしても、あるいは相手のスキを突いた走塁にしても、かつて自分の持ち味であったプレースタイルをもう一度表現してみたいのです。それができる“自信”を復活させて、走攻守全て揃った自分として満足のいく状態で、グラウンドに一年間立ち続けていたいと思っています」