プロ野球は前半戦を終え、セ・リーグはヤクルトが独走する形で首位をキープしている。開幕ダッシュに成功したカープは、交流戦で苦戦。しかし粘りの戦いを展開し、46勝46敗3分、勝率5割で前半戦を終えた。

 ここでは、カープOBの大野豊氏に聞いた前半戦終盤のカープ投手陣の印象をお届けする。(取材は7月上旬。数字は全て7月12日現在のもの)

2016年ドラフト1位の矢崎拓也。今シーズン、リリーフとして登板機会を増やしている。

◆徐々に形が見えてきた、今シーズンの『勝ちパターン』

 本格的な夏場を迎える中、投手陣は非常によく頑張ってくれました。特に先発陣は、遠藤淳志が離脱している状況でも野村祐輔が一軍に昇格してくるなど、ローテーションをしっかり守ることができているのではないでしょうか。

 ただ、チーム全体としては、もう一つ上に行くための勢いがなかなかつかないのが現状です。首位ヤクルトとのゲーム差が開いているだけに、まずは2位を見据えた戦いをする必要があるでしょう。

 とはいえ、まだまだシーズンは折り返し地点です。まずはオールスターまでに勝率を5割に戻すこと、そして、一つでも多く勝ち越すこと。その点を意識して投手陣が試合をつくれるかどうかが、大きなポイントになってきます。(7月24日時点でカープは46勝46敗3分、勝率5割)

 6月5日に抹消され6月17日に再昇格した大瀬良大地は、徐々に本来の調子を取り戻しているように見えます。

 ただ、彼の立場や能力を考えると、やや物足りない印象があるのも事実です。大瀬良は責任感の強い投手ですから、「抑えなければ」という思いが強くなりすぎて力が入ることもあるでしょう。ただ、『力強さ』と『力み』はまったくの別物です。大瀬良の場合は、力強さを出そうとした結果、それが力みにつながっているように見受けられます。技術はある選手なのですから、そんな時こそ冷静に自分のタイミング、自分のフォームで投げ切ることを意識してもらいたいと思います。

 同じく先発の柱である森下暢仁は、球数の多さが気になるものの、しっかり試合をつくることができています。彼の強みはピンチでギアが一段階上がるところです。これはまさに『力強さ』が武器になっている良い例でしょう。当然、相手も森下を警戒しますし、研究されて思い通りに投球できないこともあると思います。今年の森下は、そうした壁を打ち破っていかなければなりません。あとは打線の援護となりますが、こればかりは巡り合わせですから難しい部分でもありますね。

 リリーフ陣がいかに良い形で試合に入っていけるかも重要です。徐々に『勝ちパターン』ができあがりつつありますが、安定して続かないことも課題でしょう。

 リリーフ全体としては、四球や安打で先頭打者を出す確率が高いことが気になります。“先頭を抑えれば必ず無失点で切り抜けられる”というわけではありませんが、先頭打者を出すとその後の投球そのものが苦しくなることもありますから、まずは一人目をしっかり抑えてほしいと思います。

 リリーフ陣では、矢崎拓也、ケムナ誠の2人も非常に頑張っています。矢崎は一時期に比べ、制球力が大きく向上しています。期待されつつも伸び悩んでいただけに、現在の起用方法を見ていると、佐々岡監督の矢崎に対する期待が感じられます。たとえ打たれてしまっても、その結果を引きずることなく次の登板でしっかり投げることができれば、6・7回を任される投手になる可能性は大いにあります。

 ケムナも、十分に相手打者を抑えることができる力を持った投手です。彼は、自分自身でタイミングやフォームを崩して苦しくなってしまう印象がありますから、まずは自分と自分の球を信じてしっかり投げ切ることを意識してほしいと思います。投げる球だけでなく気持ちもコントロールしながら、自信を持って投げてほしいものです。

 勝ち試合のセットアッパーとして登板する投手にとっては、結果だけでなく投球の内容も重要になります。持ち球をしっかり投げて抑えることができれば自信にもつながります。矢崎もケムナも十分にセットアッパーとして働ける力を持っていますから、自分の投球のレベルをもう一段階上げて打者に向かっていってもらいたいです。

《後編へ続く》