ルヴァンカップ、天皇杯、そしてリーグ戦……連戦が続く中、上位奪取に向かって邁進するサンフレッチェ広島。ここではサンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏に、2022年6月中旬からのサンフレッチェを振り返りながら、注目選手やプレーなどを熱く語ってもらった。

 吉田氏が感じた、“驚き”と“層の厚さ”を感じた場面とは……?(データは全て7月7日の取材時点。全3回のうち第2回)

 第1回はこちら。

7月17日の京都戦でシーズン6得点目をあげ、キャリアハイとなる2020年の記録を更新した森島司

ハードな連戦を経験値と力に変え、試合のたび進化する紫の戦士たち

 6月29日のG大阪戦から中2日で迎えた磐田戦(○3ー0)はさすがに立ち上がりにやや重さが感じられましたが、歯を食いしばって戦う中で、流れを変えたのがセットプレーでした。

 疲労や暑さの影響で思うように体が動かない状況下では、セットプレーは試合の流れを一気に引き寄せることができる、強力な武器になります。そういう意味でも、セットプレーから2点を挙げたこの試合の価値は非常に高かったと思います。

 セットプレーではキッカーの質が8割以上を占めるといっても過言ではありませんが、この日は2人のキッカーの質の高さにも目を見張るものがありました。

 まずは1点目ですが、キッカーの満田誠がしっかりカーブのかかったボールを相手GKとDFラインの間のファーサイドを目掛けて蹴り、そこに荒木隼人が頭で合わせて先制点を奪いました。

 2点目は、野津田のピンポイントの鋭いボールに佐々木翔が見事に合わせました。佐々木のヘディングもすばらしいのですが、野津田のボールの出し方も「お見事」の一言です。

 東俊希や森島司も含め、右と左に質の良いキッカーがいるというのも、強さの理由の一つといえるでしょう。

 藤井智也や今津佑太といった途中出場の選手も、攻撃、守備の両面で与えられた役割をしっかりと全うしてくれました。途中から出場して新たにチームのスイッチを入れることができる選手がいるのは、厳しい夏場を乗り切るための、一つの武器になるのではないかと思います。磐田戦は勝ち点3だけではない、さまざまな収穫のある試合だったのではないでしょうか。

 この連戦中は、選手を入れ替えてターンオーバーすることなく、いつも通りのスタメンで試合に挑んでいる様子を見て、正直なところ驚きも感じました。連戦の疲労をケアしつつ、その時のベストメンバーで試合に臨むことができている点にも、層の厚さを感じられます。今のチームは「目の前の1試合に集中し、絶対に勝ちに行く」という意識が全員に浸透した、非常に良い状態だと思います。

 目の前の試合に必ず勝つという高い意識のもと、常にその時のフルメンバーで相手に挑む……そこには、スキッベ監督の『哲学』を感じます。そして選手たちも監督のその哲学に応え、戦いながら成長しています。この良い流れは、シーズンの最後まで続いていくのではないかと思います。

 もちろん疲れも出てきているとは思いますが、今の状況が若い選手たちにとって貴重な経験になっていることも確かです。この連戦を乗り切ること、そして勝利を重ねていくことは、選手にとっても大きな自信になるでしょう。夏を越えて秋を迎える頃、若い選手たちがどんな成長を遂げているのか。本当に楽しみです。

《第3回に続く》