今シーズン、カープのショートは高卒4年目の22歳・小園海斗がレギュラー確保に向けて奮闘を見せている。ここでは、かつてカープのショートを守ってきた“遊撃手たちの言葉”を改めて振り返っていく。

 今から16年前の2006年、当時カープの懸案事項だった二遊間に1人のルーキーが定着した。地元広島県出身・社会人野球の日産自動車から即戦力として期待され入団した梵英心(現・オリックスコーチ)である。

 東出輝裕との二遊間で存在感を示した梵は、打線では2番に定着し打率.289をマーク。入団会見での公約通り、見事、新人王に輝いた。

 ここでは、広島アスリートマガジン2006年7月号に掲載された独占インタビューを再編集してお届けする。一時打撃不振に陥った梵が、復調のきっかけを掴んだ試合とは……。

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日産自動車を経て、2006年の大学生・社会人ドラフト3巡目で入団。即戦力として活躍した。

◆「2番の仕事をしっかりとこなせるようになりたい」

ー今シーズンはここまで、ショートを守って約37試合になります。改めてショートの重要性というものは、どういうものだと感じていますか。  

「どんな打球に対しても仕事があるというか、全部のプレーに入っていかないといけないポジションですからね。そういう意味ではショートはやっぱり内野の要だと思うし、そこがしっかりしていないとチームがボロボロになってしまうと思います。だから今の自分は相手チームの攻撃パターンとか選手の動き、そして味方の動きを見て勉強して経験していかないといけない、というのは感じますね。ただ、ショートはそういう難しい部分もあるけど楽しいし、やりがいもあります。それに最近は結果もついてきているので、『やっているな』という充実感はすごくありますね」

ーそのショートで、梵選手『らしさ』とはどんなものでしょうか。

「僕は捕る形とかは汚いし、むちゃくちゃうまいというわけではないと思うんですけど、そういう中でも確実にアウトをとっていくところですかね。自分では泥臭くてもいいと思っているし、とにかくアウトを取ることが大事。そうやって身体に染みこませていかないと試合には出られないと思うので、今はとにかくアウトにすることが自分らしさだと思います。そして、そういうプレーをしながら将来は『梵のところに行ったらアウトだ。大丈夫だ』というふうに、見ている人に思ってもらえるような選手になりたいですね」

ー打撃についてですが、一時は広島の市外局番(082)を下回ったなどと言われましたが、シーズンが進むにつれて数字も上がってきました。ターニングポイントとなった試合などはありますか。

 「やっぱり4月27日(広島)の巨人戦ですかね。あの試合は積極的に初球から思い切って振っていけたんですよ。それで第一打席ではレフトにプロ初ホームランを打つことができて、3打席目でもツーベースヒット。そのときに手応えみたいなものを掴んだと思います。それにあの日は色々(24日に亡くなった祖父の葬式に参加)ありましたからね。そういうこともあって、これまで自分の中でモヤモヤしていた部分が吹っ切れたと言ってもいい日でもあるし、27日は本当に忘れられない日ですね」