カープの二軍では多くの若鯉戦士が鍛錬を重ねている。内野陣には、現在一軍で活躍する小園海斗と同期入団・同学年の中神拓都が日々奮闘中だ。

 同期野手の小園、林晃汰、羽月隆太郎らが一軍で結果を残してきた中、中神は一軍出場の経験がない。初の一軍昇格に向けて汗を流す背番号56の「今」に迫る。

プロ4年目を迎える中神拓都。初の一軍昇格を目指し、二軍で鍛錬を重ねている。

◆もう他人と比べることはやめた。今年は自分自身との戦い

 昨年までは二塁や遊撃を守ることもあったが、プロ4年目の今季、二軍での出場は一塁と三塁に限られている。

 それだけに、特に中神拓都に求められるのは打撃。昨季53試合に出場しながら打率1割台に終わった打撃の向上がプロで生き残っていくための条件となる。

「打率を残さないと使ってもらえません。そのために必要なのは狙った球を一振りで仕留める力。1打席のなかで甘い球はそうそう来ないので、狙い球をしっかりと捉えることができるように練習から取り組んでいます」

 一振りで仕留める、これは昨季から取り組んできたテーマでもあった。ただ、積極性を重視し初球から振りにいってしまい、その結果、厳しいコースに手を出して凡打に終わる打席も多かった。昨季の結果を踏まえて、焦る気持ちを抑え、狙い球を絞り、その球が来るまで我慢するよう心がけた。今季ここまでの打率は2割台後半。意識の積み重ねが数字となって現れてきている。

「しっかりと狙い球を決めて打席に入る。その狙い球を的確に仕留めることができるよう、これまで以上に準備も大切にしています」

 内野であればどこでも守れるユーティリティな守備も、ベテラン・田中広輔からのアドバイスで進化を遂げた。

「捕球の際、今までは球を吸収しようという意識でいたため、その後の動作がバックステップになることも多く、思うような送球ができないことがありました。そんなとき、広輔さんからグローブをスコップに例えて、すくい上げるようなイメージで前に出て捕球したらどうかとアドバイスをいただきました。その意識で捕球することで、自然に球を握り変えることができ、スムーズに送球できるようになりました」

 一軍の遊撃手として活躍を続ける小園海斗とは同期入団。中神拓都が入団したこの年のドラフトでは、中神と小園の他、林晃汰、田中法彦、羽月隆太郎の5人の高卒プレーヤーがカープに加わった。ただその5人のなかで中神だけが未だ一軍出場がない。これまでなら漠然とした焦りに駆られていただろうが、中神はしっかりと現在地を見据えている。

「昨年までは他人と比べてしまうところがあり、なかなかうまくいかない部分が多かったのですが、今年は自分との戦いだと割り切っています。とにかく自分が決めた目標に少しでも近づけるようにやっていくだけです」

 大切なのは、チームのために自分がどうあるべきか。3年間で培った経験、そして味わった悔しさを土台に、初の一軍昇格に向けて、中神は自分が生きる道を探し続ける。

《プロフィール》
中神拓都●なかがみ たくと
2000年5月29日生、岐阜県出身
175cm・91kg/右投右打/内野手
市立岐阜商高-広島(2018年ドラフト4位)