◆日本には「伸びしろ」がある!

 なぜアメリカはこんなに寄付が盛んなのでしょうか。

 「宗教の違いでは?」とよく言われますがそれだけではないような気がします。私がアメリカに住んで感じたのは、教育と習慣が影響しているのではないかということ。学校では奉仕活動と教育を織り交ぜたサービスラーニングという学習システムがあったり、家庭では親が参加するボランティア活動に子どもがついていったりと、自然に地域貢献に触れる機会が多いことが寄付行為の連鎖を生んでいるのではないかと思うのです。

 また、アメリカは国民保険などの社会保障が日本ほど手厚くないので、分野によっては民間のNPOが活躍する場面がたくさんあります。それによってNPOの存在意義が高まり、寄付市場が活性化した社会的背景もあるでしょう。

 さらに、アメリカでは子どもたちが学校でお金の教育を受けていることも着目すべき点です。日本銀行調査統計局の資料によると、日本では約53%の個人金融資産が『現金・預金』であるのに対し、アメリカでは13%程度。その他の多くのお金が株式、投資信託、保険などの運用に回されます。お金の使い方を知っていてお金を動かす習慣がある、つまりマネーリテラシーが高いからこそ寄付リテラシーも高まると言えるのかもしれません。

 さて、日本はどうでしょうか。私は伸びしろがあると前向きにとらえています。歴史や宗教的観点から見ても、出家者がお経を唱えながら食物や金銭を鉢に受けて回る『托鉢(たくはつ)』や、寺院や神社の造営・修繕の際に金品を奉納する『奉加(ほうが)』など、日本にも伝統的な寄付文化は昔から存在します。現代でも40年以上続いている有名なチャリティー番組がありますよね。

 教育現場でも社会貢献教育が進んでおり、10代のSDGs認知率はどの年代よりも高い7割超(電通『SDGsに関する生活者調査』より)。今年から高校で金融教育も必修化され、次世代の若者は最低限のマネーリテラシーを持って社会に出ることになります。最近では災害支援や生活困窮者支援などの分野でNPOの活躍の場が増え、日本でも民間への期待が高まっています。あとは寄付などの資金を集めて社会課題解決に活用するファンドレイザーや、寄付したい人とNPOをつなぐフィランソロピーアドバイザーのような専門家が増えてくると、日本の寄付市場はさらに活性化するでしょう。

 プロ野球界に目を向けてみると、選手たちの「社会に対してアクションを起こしたい」という思いには日米差がないと現場にいて感じています。しかし、日本のプロ野球界では「満足な成績を残していないのにチャリティーをやるなんて」という考えが選手にもファンにもあるように思います。アメリカには「今年はいい成績を残せなかったからチャリティーで埋め合わせするよ」という考えの選手がいて、競技だけでなくチャリティーもプロ野球選手としての一部を形成する大切な要素なのだと改めて感じました。

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。