2010年から5年間カープを率い、25年ぶりの優勝への礎を築いた野村謙二郎元監督。この特集では監督を退任した直後に出版された野村氏初の著書『変わるしかなかった』を順次掲載し、その苦闘の日々を改めて振り返る。
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 サファテにもミコライオにも言えることだが、外国人投手の起用法は本当に難しい。彼らは登板過多にならないよう肩を休ませなければいけない一方で、突然当日になって「今日は肩が重いから投げない」と言い出すこともある。「3連投だから投げない」と言うときもあれば、調子が良いときには「4連投でも任せろ」と言ったりする。つまり非常に気を遣う存在なのだ。

 サファテの件があって以降、僕は外国人選手とはさらに突っ込んで話をするようになった。苦い経験を活かして、選手には「こういうケースにはこうするときもあるよ」となるべく事前に伝えておくようにした。たとえばこの年の6月に(ブラッド)エルドレッドが入ってくるが、彼にも「おまえに代打を送ってバントさせることがあるかもしれない」と事前に伝えておいた。

 外国人選手の場合、特別扱いがすぎるとチームの輪が乱れて、雰囲気が悪くなる。だから「こういうことはダメだぞ」ということは強く言わなきゃいけないが、その一方で彼らの希望も聞いてやらないといけない。そのためには対話の時間を増やし、「こういうことがあるかもしれない」という想定を事前に、丁寧に伝えておくことが大事だという結論に辿り着いたのだ。

 対話が重要なのは外国人選手だけではない。日本人選手に対しても同様である。僕は調子が悪そうな選手がいれば、監督室に呼んでよく話をした。基本的には一対一。僕が話すというより選手の悩みを聞くという立場で臨む。何かを伝えなければいけない場合も、僕は選手と直接話すよう心掛けていた。