2010年から5年間カープを率い、25年ぶりの優勝への礎を築いた野村謙二郎元監督。この特集では監督を退任した直後に出版された野村氏初の著書『変わるしかなかった』を順次掲載し、その苦闘の日々を改めて振り返る。
「変わるしかなかった。」のご購入は、広島アスリートマガジンオンラインショップ

 

 この年はコーチ陣の再編が行われた。まず、新井宏昌さんがオリックスからこられた。新井さんは多くの打者を育てたバッティングコーチの第一人者である。ピッチングコーチには古澤憲司さんがこられ、山内泰幸と組むことになった。

 守備・走塁コーチには2012年に現役を引退した(石井)琢朗が就任。緒方(孝市)は守備・走塁コーチからバッティングコーチに回り、新井さんのサポートをしながらその指導法を学ぶことになった。メンバーは変わったが、最初から「結果を出さないとマズい」という危機感はかなり強かった。だからだろうか、とにかくコーチ陣はよく動いてくれた。

 選手と二人三脚で毎日グラウンドで汗を流す。試合が始まる前には若い選手にノックをして、打たせて、また試合後にそれを繰り返す。アメリカからの野球が主流になる中で古い昭和の野球の臭いを残しているのは、僕はこのチームの良いところだと思っている。

 琢朗がコーチになるときに何か声をかけたとか、そういうことは特にない。琢朗の思うようにやってほしかったので、僕は何も言わなかったし実際そのままやってもらった。新井さんとも最初にサインについて30分間話しただけで、あとは全部お任せした。