新井貴浩監督の就任会見から約2カ月が経った。秋季キャンプも始まり、来シーズンへの期待はますます高まるばかりだ。広島アスリートマガジンでは、これまで、現役時代〜引退後にかけて新井監督の声をファンへ届ける独占インタビューを掲載してきた。ここでは、2019年1月号『永久保存版 新井貴浩』より、インタビューの一部を再編集して掲載する。

 広島復帰2年目の2016年4月26日。新井は学時代を過ごした思い出の神宮球場で、2000安打を達成した。 ここに辿り着くまでには、想像を絶する努力とさまざまな人の支えがあった。大記録達成後の新井貴浩に、2000安打までの道のりについて語ってもらった。

1998年のカープ入団から18年、史上47人目の2000安打達成選手となった新井貴浩。

◆意識したのは達成試合の第一打席

ー2000安打達成おめでとうございます! 記録達成から少し日にちが経ちましたが今の心境はいかがですか?

「ありがとうございます! 達成する前と心境は何も変わっていません(笑)。でも、ホッとした気持ちはありますね」

ー記録を達成したという実感が湧く瞬間はありますか?

「いろんなものやお祝いのメールをいただいたりしたときに感じます。あと、この間自宅に帰ったときに部屋がお花畑みたいになっていたときも、すごい記録を達成したんだなと実感しました」

ー記録達成された試合はどんな気持ちで迎えられていたのですか?

「残り1本になって報道陣の数も多かったですけど、平日の火曜日でビジターの神宮にも関わらず、たくさんのカープファンの方々が見にきてくれてすごくうれしかったですね。試合が始まる前の練習、試合が始まってからも全然緊張していませんでした。でも第一打席に名前がコールされて打席に向かうときにすごい歓声で、『たくさんの人が見にきてくれているし、今日打たないとまずい』と思ったら一気に緊張してきましたね(苦笑)」

ー緊張する打席というのは、新井選手の経験上で多くあるものなのですか?

「僅差の場面や得点圏での打席などはいつも緊張していますが、あの第一打席は緊張の種類が違いましたね。あの緊張感は初めての部類かもしれません」

ー第二打席で達成された訳ですが、打った瞬間はどんなことが頭のなかで巡っていたのですか?

「まずはホッとしたというのが一番でしたね。そしてファンのみなさんがすごく喜んでくれているのが伝わってきたので、それがうれしかったです。あと、あまり試合を止めてはいけないなと思っていました(笑)。試合もまだまだ序盤でしたし、自分の記録を達成したことにゆっくりと浸る感覚はありませんでした」

ー記録達成後、メール、電話など祝福の数もすごかったのではないでしょうか?

「今までの人生のなかでもダントツですね。もちろん嬉しかったですが、『この量を返さなきゃいけない』と思ったらゾッとしました(笑)。僕はスマホではなくガラケーなんですが、一週間近くかかって全部返信させていただきました。達成した日からメールを返し始めていたのですが、深夜4時くらいに『もう限界だ』と思って寝ました(苦笑)。でもこんな経験は滅多にないですし嬉しい疲れでした」

ー記録達成に向けて、新井選手を後押しするTシャツをチーム全員が着用する動きもありました。

「びっくりしましたし、全然知りませんでした。試合前練習の開始15分くらい前に鈴木(清明・球団本部長)さんに呼ばれたのですが、話も本当にたわいもない内容で僕は時間ばかり気になっていました(笑)。終わってロッカーに誰もいなくなっていて、最後にグラウンドにいったらみんな同じTシャツを着ていたので、本当にびっくりするだけでした。裏方さんも含めてみんなに着ていただいていて、素直に嬉しかったです」