11月8日に、楽天生命パーク宮城で行なわれた12球団合同トライアウト。今年は、3年ぶりに観客を入れての開催となり、スタンドには多くの野球ファンが全国から駆けつけた。ここではOBの笘篠賢治氏に、トライアウトにも参加した今季カープを去る鯉戦士たちについて語ってもらった。

2021年・春季キャンプでの安部友裕。今季は二軍で打率.368という成績を残した。

◆どんな形であれ、その人生を見守っていきたい。

 11月8日に楽天生命パーク宮城で、トライアウトが行われ、カープからは安部友裕、中神拓都、菊地保則、田中法彦、山口翔、高橋樹也が参加しました。私も過去にお仕事などでトライアウトを見ることもありましたが、本当に良いものがあっても結果を残せなかった選手もいれば、結果を残しても声がかからない選手もいます。厳しい世界ではありますが、良い知らせがあることを願っています。

 私が特に気になるのが安部についてです。33歳で自由契約になってしまいましたが、他球団でもう一花咲かせる可能性も十分にあるはずです。今年は二軍で打率.368という成績を残しながら、一度も一軍に上がることがなかったというのは、ファンとしても寂しい別れです。

 気持ちが切れそうになることも多々あったかと思いますが、どんなときでも前を向いて取り組んできたその立派な精神力には脱帽です。プレー以外でも周りを元気づける、そういう姿勢というのはチームにとって大きな存在で、キャプテンにしても良いくらいの選手だったと個人的には感じます。

 小窪哲也、梵英心のように、今後もう一度違った形でユニホームを着て指導する道も無きにしもあらずだと思います。野球選手というのは満足した形で終わるのが理想ではありますが、そうなれなかった人がほとんどです。ただ、苦労した人間は強いです。自分がやれたこと、自分が失敗してできなかったこと、それらもすべて経験値です。それらを生かしてくれるはずだと思っています。

 現役にこだわるというのが彼自身の目標でもあり、今後どんな野球人生を歩むかは、分かりませんが、必ず野球界に貢献する人材になってくれるはずです。どんな形でも野球に携わっていくのであれば、その人生を見守っていきたいですね。

 そして、白濱が現役引退を発表しました。「まだできますけど、カープ以外で考えていない」とコメントしていましたが、7月23日の神宮球場でのファンのみなさんの反応が本当に嬉しかったはずです。プロで初めて試合に出たときも嬉しかったと思いますが、それ以上だったと思います。

 今後はまだ分かりませんが、選手から頼られる裏方スタッフみたいな道もあるのではないでしょうか。2013年に胃がんで亡くなった相馬勝也さんも、西武で引退後にブルペン捕手を経て、バッテリーコーチになりました。伊東勤さんという正捕手がいたため、控え選手という存在でしたが、人望もあり、人間性を含めて首脳陣は評価してくれていて、長い間ブルペン捕手を務めていました。その後はコーチになり、素晴らしい指導をされていましたので、白濱にもぜひ、そういった存在になってもらいたいですね。