2022年シーズン、ついに悲願のカップ戦タイトルを手にしたサンフレッチェ広島。チームの躍進の裏には、急成長を見せた若い選手と豊富なキャリアを持つベテラン選手の相乗効果があった。

 ここでは広島9年目を迎え、ピッチの内外でチームを支えるMFが、今シーズン、そしてこれからの広島への思いを語る。

今シーズン、サンフレッチェでのキャリア9年目を迎えた柏好文。

選手とチームにポジティブな力を与え続けた、新指揮官の『言葉』

ーまずはルヴァン杯優勝おめでとうございます。今回のインタビューでは、天皇杯、ルヴァン杯決勝の2試合をお伺いしながら、今シーズンのサンフレッチェ広島について振り返っていきたいと思います。まずは天皇杯、古巣・甲府との決勝戦でしたが、どのような思いで臨まれましたか。

「山梨で育って、甲府でキャリアをスタートさせてもらい、決勝という舞台で自分の育ったクラブや街の人たちと戦えるのは素晴らしいことだと思いましたし、楽しみでしかありませんでした。もちろん勝てれば良かったのですが、あの舞台で甲府と戦えたということは『感謝』の一言でしかないですね」

ー試合は前半の失点で、追う展開となりました。

「どの試合でも先制されることはありますが、決勝という舞台を経験したことのない選手も多かったですし、他の試合とはまた違った状況だったのではないかと思っています。決勝の難しさプラス、先に点を取られてしまってからのゲーム運びの難しさというものもあったかと思います」

ー柏選手自身も、普段とは違う心境だったのでしょうか。

「普通にしようと思っていても絶対に気持ちは高ぶるでしょうし、観客もいつもより入りますし、普段通りに臨もうとしても、環境が絶対的に違うことはわかっていました。チームとしても良い状態で準備をして入ろうと思っていたのですが、立ち上がりから思ったように自分たちのサッカーができなかったということが、天皇杯の率直な感想かなと思っています」

ーその天皇杯からわずか5日後にルヴァン杯の決勝に臨まれたわけですが、気持ちの切り替えの部分で、難しさもあったのではないですか?

「サッカー人生を通して、2週連続して決勝戦に臨めるということ自体が素晴らしいことですし、なかなかありえないことだと思うので、その舞台に立てたことは自分たちに自信を持って良いと思います。もちろん、天皇杯でタイトルを逃したことでチームとしての失望感もありましたが、タイトルを一つ失っても、またすぐに次に挑戦できるありがたみというのは全員で共有できましたし、逆にすぐ目の前にもう一つタイトルを取れるチャンスがあるということで、チームとして次に向かうことができたのかなとは思いました。監督を含めて、ポジティブな声掛けをしてくれ、チームとして次に向かっていこうという思いが共有できたからこそのルヴァン杯のタイトルだったと思います」

ー『ポジティブな声掛け』という言葉がありましたが、具体的にはどのようなお話があったのでしょうか。

「ルヴァン杯に向けては、『もともと自分たちはカップは持っていない、持っていたらそれを失うことになったけれども、持っていないのでそれはないんだ』という声掛けがありました。スキッベ監督は、年間を通してポジティブな声掛けをしてくれています。練習中から非常に良い声掛けをしてくれていたので、その積み重ねで選手はポジティブな気持ちを持ち続けることができましたし、それがルヴァン杯優勝という結果につながったのではないかと思います。シーズンを通して選手が伸び伸びと自信を持ってプレーできているのも、そうした声掛けが常にあったからだと思っています」

ー監督の言葉を受けて、柏選手はどのように感じましたか?

「監督の言葉には、天皇杯だけでなく他の試合でも、あっと驚くようなものがありました。いろいろな名言集があるので、詳しくはチームのYouTubeなどで調べてもらえばわかると思います。サッカーだけでなく、日本の社会にもつながるような声掛けもありました。やはり、褒められれば何歳になってもうれしいですし、自信になっていく部分もあります。常に良い声掛けをしてもらったことで『前を向いてやろう』と思えましたし、選手としてもチームとしても成長できたのではないかと感じています。スキッベ監督は、刺激的な声掛けやマネジメントをする監督だと思うので、僕自身35歳を迎えてベテランといわれる中でそうした監督に出会えたことは、大きかったですね」

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