15年間の現役生活を終え、2022年限りでユニホームを脱ぐ決断を下したカープ安部友裕。“覇気”を代名詞に25年ぶりのリーグ優勝、3連覇に大きく貢献した男が、改めて自らのプロ野球人生と、感謝を語る。

熱いプレーと“覇気”のフレーズでファンに愛された安部友裕。

純粋に野球を楽しめて、トライアウトに参加して良かった

─現役を引退されて、少し時間が経ちましたが今のお気持ちはいかがですか?

「そうですね、社会人1年目という感じに気持ちは切り替わっています」

─シーズン終了後、チームからは来季の契約についての話があった中でどのような気持ちだったのでしょうか?

「なんとなく感じると言いますか、ときがきたなという思いと、次に動き出そうという心境でした。その時点で僕としては現役を続けたかったので、カープを出るという選択肢でした」

─現役続行という思いは、かなり強い思いだったのでしょうか?

「正直なところ『もうここで区切りをつけようか』という思いもありました。本当に悔いなく取り組みましたし、『あのときやっておけば……』ということも思い返してもありません。ただ、いろんな方に『まだできる』という声をいただいて、葛藤がありました。妻も子どもからもまだプレーを見たいと言われて、トライアウトを受ける決意をしました」

─トライアウトを決断してからの準備期間はさまざまな手助けがあったそうですね。

「いっちー(一岡竜司)、(野村)祐輔、(九里)亜蓮も投げてくれましたし、松山(竜平)さんも来てくれました。長野(久義)さんも、1日も欠かさずずっと手伝ってくださいました。本当にうれしかったですね」

─実際にトライアウトでプレーされていかがでしたか?

「もう楽しかったです。トライアウトまでにオファーがなかったら厳しいだろうなとは思っていました。『僕が野球を始めたときはどんな気持ちだったのか』ということを思い返すことができましたし、純粋に野球を楽しめて、トライアウトに参加して良かったと思います」

─トライアウトでは、カープ時代のチームメートである福井(優也・楽天)投手とも対戦されました。

「これで僕のプロ野球人生が終わるかもというところで、お世話になっていた福井さんと対戦できたということは、縁を感じましたし、不思議な巡り合わせでしたね」

─トライアウト後のオファーを待つ時間はどのような心境でしたか?

「やっぱりドキドキ感がありましたし、何回か知らない番号からかかってくることもありました。結果的に(NPBから)オファーはありませんでしたが、これは経験しないと分からないことです。今後同じような境遇の選手がいたときに手助けになれればと思います」

─オファーの連絡がなかった時点で引退を決断されていたのでしょうか?

「連絡がこなければ、すぐにスパッと辞めると決めていましたので、その時点で引退を決断しました」

─改めて現役時代の話を聞かせていただきます。現役最後となった今シーズンですが、どんな心境だったのでしょうか?

「二軍が開幕して、試合に出させてもらって、その日の試合で肉離れをしてしまったんです。『一軍に上がる準備をしておいてくれ』と言われていた矢先だったので、全くチャンスがなかった訳ではありません。一軍である程度の成績を残せるという手応えと自信もありました。そういう思いの中で、シーズン中は二軍で試合に出る機会も少なくなりました。(田中)広輔や、長野さんたちも二軍でプレーする時期がありましたが、それぞれ思いがある中で『とにかくみんなでやる時はやろうぜ!』というような明るい雰囲気づくりをしていました。そういう姿はすごく勉強になりました」

─苦しい状況の中でも何かを吸収しようということですね。

「そこで僕が、『なんで俺だけ』と言ったところで、何も前に進まないと思うので、そういう状況の中でもちゃんと取り組んでいたいと思いましたね」

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