1月7日、10名の新人選手が大野寮に入寮した。プロ野球選手としてのスタートを切った期待の新人選手たち。彼らが入寮時に持参したアイテムにも、ファンの注目が集まった。
ここでは、現在主力として活躍する選手たちの入寮時の秘蔵カットを紹介する。今回は、2020年に、両リーグを通じて“二塁手としては史上初”となるシーズン守備率10割を達成した、名手・菊池涼介の入寮を取り上げる。
◆ガムシャラにチャンスを追い求めたルーキーイヤー
2012シーズン、中京学院大からドラフト2位で入団した菊池涼介。担当スカウトが惚れ込んだ肩の強さ、広い守備範囲がセールスポイントの内野手は“ある決意”を秘めて、広島の地に立った。
それは入寮日に菊池が準備したグローブにあらわれていた。「内野と外野、どちらも守れるように準備していきたい」と、内野用のグローブとは別に、外野用のグローブを持参し、入寮時の取材に臨んだ。
菊池は、入寮の前月に行われた新入団会見でこう決意を語っていた。
「これまでショートをやってきたので、カープでもショートを目指したいですが、出場するチャンスがあるのであれば、内野の他のポジションでも、外野手でもやりたいと思っています」
結果がすべてのプロの世界で生き残るため、自身のこだわりは捨て、ガムシャラにチャンスを求める覚悟でプロ生活をスタートさせた。
1年目のシーズンは二軍で開幕を迎えたが、はやくも6月に一軍昇格。7月にレギュラーの東出輝裕の怪我で離脱すると、以降は二塁手として試合出場を重ね、持ち味である守備力で存在感を高めていく。そして、振り返ると、ルーキーイヤーに二塁手として積んだ経験が、世界を代表する二塁手へと菊池を導いていくこととなる。
2013年からは、二塁手のレギュラーに定着。ヒット性の打球をアウトにする守備範囲の広さ、どんなに深い位置からも強く正確なボールを投げる安定したスローイング技術で、これまでの守備の名手が積み重ねてきた記録を次々と更新。そして、2020年には、セ・リーグ二塁手のシーズン連続守備機会無失策記録を更新し、二塁手としては史上初となるシーズン守備率10割という偉業を達成した。
外野手でもやる覚悟と語った入団会見では、「将来、ゴールデングラブ賞を獲りたい」と話していたが、レギュラーに定着した2013年から8年連続でゴールデングラグ賞を獲得。今や球界屈指の守備力を持つ二塁手としての地位を確立した。
その始まりは、菊池が大野寮に持ち込んだ2つのグローブ。ガムシャラにチャンスを求める覚悟が、菊池の運命を動かすきっかけとなった。