2022年シーズンで現役引退を決断した、カープ一筋14年の中田廉。"兄のような存在"と信頼を寄せる前田健太の魅力について、改めて中田ならではの視点で熱く語ってもらった。

2022年限りで引退を発表した中田廉。現役時代は“チームマエケン”としてファンから親しまれた。

出会いは中学時代。プロの世界で再会し、距離が縮まった大阪自主トレ

 マエケンさんは僕にとって長い間、憧れの存在でした。中学時代に同じボーイズリーグでプレーしていて、僕はナガセタイガース、マエケンさんは忠岡ボーイズというチームに所属していました。学年は2つ違うのですが、僕が1年生のときにマエケンさんは既にスーパースターでした。『桑田真澄2世』として地元では知らない人はいないような存在で、かっこいいなと一方的に憧れていました。

 その後、PL学園で1年から背番号1をつけて甲子園のマウンドで投げているのも、カープに入団してから一軍で投げているのもずっと見続けていて、「やっぱりマエケンさんってすごい」と思っていました。

 本当にただのファンみたいな感じだったのですが、実は入団前から僕のことを知ってくれていたんです。幼馴染に忠岡ボーイズ、PL学園でプレーしていたマエケンさんの後輩がいたのですが、ドラフトで指名されたときに「中田廉っていう同級生がカープに入るのでよろしくお願いします」と言ってくれていたみたいで、合同自主トレのときに「聞いているよ」と向こうから話しかけてくれたのです。びっくりしましたし、めちゃくちゃ緊張したのを今でも覚えています。

 当時はこんなに仲良くしてもらえるなんて思ってもいなかったのですが、仲が深まったきっかけは1年目のオフでした。マエケンさんから「大阪で自主トレやるけど一緒にどう?」と誘ってもらったのです。僕はずっと二軍で、マエケンさんは一軍でバリバリ活躍していて、シーズン中に会う機会は全然なかったのに、ずっと気にかけてくださっていたのでした。また、トレーニングは二人きりだったので、必然的に距離が近づいていきました。

 当然今でもリスペクトしていますし、当時も超えてはいけない一線をちゃんと引いていたのですが、そこをマエケンさんがぶち破ってくれて、憧れのマエケンさんから、段々とお兄ちゃんみたいな存在になり、いつしか「健太くん」と呼ぶようになっていました。

 マエケンさんからたくさん学ぶことはありましたが、正直技術的なところは真似できないので、主に精神的なところを学びました。昔はかなりネガティブで、試合で打たれたら「投げたくない」みたいなことをマエケンさんといるときにボヤいたりもしていたのですが、そういうときはいつも「マイナス思考は直したほうがいい」と叱ってくれました。「一軍で投げたくても投げられない選手がいるんだから、お前は彼らの分も代表してマウンドに上っていることを自覚しなさい」と。そこから意識してポジティブにいるようになりました。

中編につづく

●中田廉・なかたれん
2008年ドラフト2位で広陵高からカープに入団。主にリリーフとして活躍する。2022年シーズンで現役引退を決め、現在はメンズフィジークへ挑戦することを発表。通算成績は267試合、15勝16敗0セーブ、51ホールド、防御率4.43。

広島アスリートマガジン2月号は、本誌初登場!秋山翔吾 2023年の覚悟』。さまざまな角度から秋山選手の“覚悟”に迫りました。2015年以来の登場となる、前田健太選手インタビューにもご注目ください!