新井貴浩監督体制となり初となった春季キャンプではさまざまな“変化”が感じられた。
ここではカープOBの笘篠賢治氏が、独自の見解でキャンプを語っていく。

(取材は2月3日に実施)

春季キャンプで存在感を見せ、今季支配下登録を狙う木下元秀

◆若手が見せる存在感、目の前の目標を着実に……

 春季キャンプは随所に新井貴浩監督の色が出ており、とても活気あるキャンプになっていました。見ているカープファンの方々からも、期待感がひしひしと伝わってきますね。今回は私が気になったポジション、そして若手野手を中心にお話しさせていただきます。

 まずは捕手陣です。今季から捕手一本となることが話題となっている坂倉将吾を筆頭に、石原貴規、磯村嘉孝が一軍スタートとなりました。昨年チーム唯一の全試合出場を果たした坂倉を見ていると、あの若さですがチームを背負っているような雰囲気がありますし、表情やインタビューの受け答えにしても、チームに欠かせない存在に成長しているように感じます。もちろんプレッシャーもあると思いますが"俺がやらなきゃ"という気持ちが前に出ているように感じます。また、アクシデントもあり二軍スタートとなりましたが、捕手として実績と経験のある會澤翼との競争にもなります。會澤自身も例年までとは違って、さらに頑張らなければという思いがあるでしょう。

 そして捕手陣にとっては藤井彰人ヘッドコーチや、石原慶幸一軍バッテリーコーチなど、現役時代に実績のあるコーチが新しく入ってきたことは、良い影響があるでしょう。カープ捕手陣のレベルは誰を出しても相当高いと思いますし、競争が激しいものになると予想されるだけに、シーズン開幕まで、捕手陣のポジション争いは注目していきたいですね。

 ここから捕手陣以外に目を向けていきましょう。まず個人的に気になったのが、育成選手の木下元秀です。今回は一軍キャンプスタートのチャンスをつかみましたが、新井監督の目に止まるだけの、大きな可能性を秘めた選手だと思います。

 秋季キャンプでも話題となりましたが、大きな声を出し、ハキハキと発言しているところは良いですね。それはプレー以外の部分でとても大切なことですし、若手らしくしっかり監督にアピールできていると感じました。もちろん、黙々と練習に臨むタイプの選手もいますが、あそこまで自分を表現する選手は、私がコーチだとしても気になる存在です。

 木下以外にも2年目の田村俊介や、昨年秋に支配下登録されたばかりの二俣翔一らも堂々と練習に臨んでいる姿が印象的です。普通であれば、若手選手は一軍の雰囲気に圧倒されることもありますが、彼らのハツラツとした表情を見ていると、気持ちを思う存分に表現できる環境と雰囲気づくりができているキャンプなのだろうと感じますね。

 特に彼らのような高卒野手は、自分自身のことで精一杯になるのが当たり前ですが、それで良いのです。キャンプが終われば、オープン戦が始まります。シーズン開幕に向けて、首脳陣の構想が徐々に固まっていくなかで、決められた人数が一軍に選ばれていきます。彼らは生き残りをかけてアピールを続けていかなければならない立場ですが、まずはケガをしないように、目の前の取り組みを着実にこなし、なんとか開幕一軍をつかんでほしいと思います。

 今回は若手選手を中心にふれてきましたが、新井監督が就任時から口にしている機動力野球の復活、そしてマクブルームを筆頭に考えられるであろう4番打者争いなど、非常に見どころの多いキャンプでした。若手を含め、どのような布陣で開幕を迎えるのか、注目していきたいですね。

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