日南での1次キャンプ、そして沖縄での2次キャンプが本日ですべて終了した新井カープ。開幕戦に向けてチーム内の競争が激しさを増すなか、キャンプ視察を終えたOB・大野豊氏が、今季注目の投手陣を独自の視点で解説する。

(取材は2月6日に実施)

日南キャンプに訪れた黒田博樹アドバイザー(右)の話に、熱心に耳を傾ける栗林良吏(左)

他球団にも引けを取らない、充実のカープ投手陣。万全の状態でシーズン開幕へ!

 新井貴浩新監督の下、日南キャンプ・沖縄キャンプが終了しました。ここでは主に、日南キャンプの様子を中心に、今シーズンの投手陣についてお話ししていこうと思います。

 まずは先発ローテーションの一角として期待される、床田寛樹と森下暢仁についてです。床田は故障明けということが懸念されていましたが、ここまではある程度、順調に回復をしてきているようです。森下も同様に、昨年手術を受けた肘の状態を見つつ、まだそこまで無理をする必要はないのではないかと感じています。もちろんベストは2人とも開幕に間に合うことですが、長いシーズンを考えると、無理をして後々またケガをしては意味がありません。新井貴浩監督としても、無理をせず、まずはしっかり投げられる状態をつくってほしいと考えているのではないでしょうか。

 この2人が先発ローテーションに入れなかった場合を想定すると、この春季キャンプでは、6番手以降の投手をどう育てていくかということが課題になります。大瀬良大地、九里亜蓮、アンダーソンらはもちろん、遠藤淳志、森翔平といった若い選手にも注目したいところです。新人投手の起用法は監督の采配次第ですが、左の長谷部銀次、右の益田武尚と河野佳のうち、1人でも先発で起用できれば……という考えはもちろんあるでしょう。そういう意味でも、先発陣の顔ぶれが楽しみなシーズンになるのではないかと思います。

 今シーズンもクローザーとして期待される栗林良吏は、3月に開幕するWBC日本代表に選抜されました。シーズン中に使用されるNPB球と、WBCで使用されるMLB球には大きな違いがありますし、肩がまだできあがっていないなかで、それらの球の違いに対応するのは非常に難しいでしょう。しかし、WBCに出る以上は、その違いにもしっかりと対応しなければなりません。球が違うなかで苦労もあると思いますが、栗林であればどんな状況であれやってくれると信じています。

 2月5日には、黒田博樹球団アドバイザーがチームに合流しました。どういう形でチームに関わっていくのだろうと思っていましたが、あのようにキャンプに参加してくれたということは、若い選手にとっても非常に良い経験になったのではないでしょうか。黒田アドバイザーのような存在が身近にいて、自分の投球を見てもらえる、アドバイスをもらえる、直接会話ができるというのは、他のチームからすればうらやましい環境です。この機会をうまく活かして、技術やメンタル面を身につけていってもらいたいですね。

 リリーフ陣では矢崎拓也も順調に仕上がっているようで、力のある球を投げることができていました。ここから状態が上がっていってくれれば、今シーズンも十分に期待の持てるセットアッパー候補になってくれるでしょう。新加入の戸根千明も、気持ちの強さを感じる投球を見せてくれました。左の投手として非常に楽しみな戦力になってくれると思います。

 カープの投手陣には、他のチームに比べても引けを取らない選手たちがそろっています。個々の選手が1日1日を大切に、やれることをしっかりとやって課題を克服し、さらに成長し技術を高める。そして万全の状態でシーズンに入っていってくれることを期待したいと思います。

広島アスリートマガジン3月号は、WBC特集!『照準は世界一。栗林良吏、いざWBCへ!』。日本代表の一員としてWBCに出場する栗林選手インタビューをはじめ、世界の強豪国と戦ってきた石原慶幸コーチ、川﨑宗則選手のインタビューにもご注目ください!