いよいよ始まったサンフレッチェ広島の2023年シーズン。開幕ホーム2連戦では勝ち星を手にすることができなかったが、随所で見せた全員でアグレッシブにゴールを奪いにいくスタイルは昨年から変わらずサポーターを魅了している。

 今回は、サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏が、開幕直前に行われたキャンプを視察して感じた、新シーズンの広島への期待を語った。

(取材は2月8日に実施)

昨季に続き、ホーム開幕戦でスタメン出場を果たした中野。

2部練習、連日オフなし……例年以上にハードなキャンプ

 ついに、サンフレッチェ広島の2023年シーズンが幕を開けました。昨シーズンは、ルヴァン杯優勝、天皇杯準優勝、そしてリーグ戦では3位という好成績を残したサンフレッチェ広島ですが、結果以上に、見ていてワクワクするサッカーでファン、サポーターを楽しませてくれました。今シーズンも大いに期待がかかりますが、今日は、トルコでの1次キャンプと、実際に私自身が視察に行った宮崎2次キャンプで感じたチームの変化、ならびに、ここからの展望を中心にお話しさせていただこうと思います。

 今シーズンのキャンプは、なんといってもそのハードな内容が注目されました。ここまではオフなしで進んできていますし(取材時の2月8日時点)、トルコキャンプではトレーニングマッチ翌日でも午前と午後の2部練習を行うなど、本当に厳しいトレーニングを続けてきました。宮崎キャンプに入ってもその基本的なスタイルは変わることなく、トレーニングマッチを取り入れながらも、次の日は練習でしっかり追い込んで……という日々が続きました。2月4日に行われたFC東京とのトレーニングマッチは0ー4で敗れてしまいましたが、ハードなメニューが続く中、選手自身の体も重く、なかなか思うようなプレーができないであろうことは想定済みだったのではないでしょうか。むしろ、疲れもあり体が重い中であっても、各選手はよく動けていたのではないかと感じました。

 ただ、キャンプも終盤に入ると、これまでの2部練習を1部練習にするなどの変更を加えながら、選手たちの負荷を少し抑えたトレーニングをしていた印象があります。そんななか、体が少し軽くなった状態で迎えたのが、2月8日のFCソウル戦(45分×3セット、◯4ー2)でした。

 なかでも注目した選手が、新加入の中野就斗、山﨑大地、志知孝明の3選手です。

 昨年の戦力から藤井智也(鹿島)が抜けたことにより、両サイドがどうしても手薄になるのではないかと感じていましたが、トレーニングマッチで右WBに中野、左WBに志知が入ってプレーする様子を見ていると、彼らはかなりの戦力になるのではないかと感じられました。中野はFC東京戦でもスタメン出場していましたが、フィジカルが非常に強いですし、1対1にも強く運動量も豊富、身長もあるので空中戦にも強いのが特徴です。彼はフィードも良いですし、即戦力としてかなり期待が持てると感じました。山﨑は3バックの真ん中でプレーしていましたが、彼もフィジカルの強さ、対人の強さ、そして中野同様にフィードの良さには素晴らしいものがあります。昨シーズン、『鉄板』と言われた広島の3バックに割って入る実力は十分にあるのではないかと感じました。今シーズン、誰がレギュラーをつかみ取るかはまだまだ未知数で、その分、ここからが非常に楽しみだと感じさせてくれるキャンプになっていたと思います。

 開幕戦が迫ってきたタイミングでは、本来であればスタメンを固めた状態でトレーニングを積んでいきたいところではあります。しかし、スキッベ監督はまったくメンバーを固定することなく、常にチーム内での競争を促し続けていました。これはつまり、どの選手にもチャンスが与えられているという状況ですから、全選手がモチベーション高く「俺が試合に出るんだ」という思いでトレーニングに取り組めていると感じましたし、誰が開幕戦でスタメン出場しても、高い強度で広島のサッカーができるのではないかと思いました。

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