その左足から繰り出されるコーナーキック。相手GKに襲いかかる、強烈なミドルシュート。レジェンドの引退セレモニーで決めたゴールでは、高く掲げた11のハンドサインがエディオンスタジアムに集まった多くのサポーターの胸を打った。
広島を愛し、広島のために力を蓄え、広島のために戻ってきた背番号『7』。
今や広島に欠かせない“心臓”となった野津田岳人が、新シーズンへの思いを語る。
◆サンフレッチェの一員として、エディスタで試合ができるのは幸せなこと。
ー2022年シーズンは、リーグ戦、カップ戦合わせて4ゴールをあげています。すべてエディオンスタジアム広島(以下、エディスタ)でのゴールでしたが、ホームへの思いは特別なものがあるのでしょうか。
「僕自身、アウェイで得点することが多いというイメージがあったのですが、昨年のゴールは全部エディスタで決めることができて、そこは自分にとってもすごくうれしかったです。ホームで試合をする時は、今まで以上に楽しい気持ちというか……すごく幸せな気持ちでプレーできていたんです。改めて、広島の一員としてエディスタで試合ができるのは幸せだなと感じながらプレーできたシーズンでした。エディスタは小さい頃から見てきた場所でしたし、プロになってからは、ここでプレーしたいという気持ちを持ちながらも、いろいろなチームを転々としていた時期がありました。『もう一度エディスタで活躍したい』という思いがあったなかで昨年広島に復帰して、試合にも出ることができていたので、すごくいろいろな思いを噛み締めながら戦っていたというか……慣れることはありませんでしたね」
ー「慣れることはなかった」とは、どういう意味でしょうか。
「エディスタでプレーすることに慣れることはなかったというか……。毎回、試合が始まる寸前に、ふと『ああ、ここでまたサッカーができるんだ』と思う瞬間があって、やっぱり自分は広島が好きなんだな、と感じていました。そういう意味では、エディスタのラストイヤーとなる今シーズンは、個人的にすごく寂しいという気持ちもあります」
ー小さい頃からよく行かれていたとのことでしたが、観戦する時はどのあたりでご覧になっていましたか?
「小学生の頃は自由席が多かったですね。サンフレサポーターに混じって飛び跳ねながら応援したこともありましたし、相手のサポーターに混じって観ていたこともありました。試合もすごく楽しかったのですが、スタジアムそのものが楽しいという印象があって、スタジアムの中のいろいろな場所に行くのも楽しみだったんです。相手サポーターの雰囲気も感じてみたくて、いろいろなところを走り回っていたなあ、という記憶はあります」
ー2024年には、思い出の詰まったエディスタから、新スタジアムにホームが移ります。野津田選手にとっても特別な思いがあるのではないでしょうか。
「新しいスタジアムが完成するということで、僕自身、すごく楽しみな気持ちがありつつも、これが今年でラストなんだなという寂しさも同時に感じています。だからこそ今年は、スタジアムに対しても今まで以上に思いを込めて戦いたいと思います」